見出し画像

女性や運動習慣のない人にターゲットを絞って急成長する、チョコザップの差別化戦略とは。

RIZAPグループ(東京都/瀬戸健社長)が運営する会員制トレーニングジム「chocoZAP」(チョコザップ)が女性顧客や運動習慣のない人を取り込んで急躍進しています。

チョコザップがサービスを開始したのは22年7月のこと。フィットネスジム業界では異例の急成長を遂げ、23年9月末時点で会員数は83万人、店舗数は1026店とスピード成長を遂げています。 


▪運動習慣のない人や女性にターゲットを絞って差別化

すでに世の中に多くのトレーニングジムがあるなかで、チョコザップが大きく差別化できたのは、運動習慣のない人や女性にターゲットを絞った点にあります。
 
そこで、チョコザップは、「初心者でも通いやすいコンビニジム」をコンセプトに、トレッドミル(ルームランナー)やフィットネスバイク(エアロバイク)、トレーニング初心者でも簡単に操作できる筋トレマシンなどを設置しています。

一方で、ダンベルやベンチプレスなど、筋トレ上級者向けのマシンは設置していません。これらを設置すると、筋トレ上級者の会員が増え、初心者が通いづらい環境になってしまうからです。

▪女性が喜ぶ美容関連サービスも充実

一方で、チョコザップはサービス開始当初から、施設にセルフエステやセルフ脱毛機器を置いたり、ゴルフ練習ブースを設けたりするなど、来館動機につながるサービスを提供しています。

さらに、最近ではセルフホワイトニングやセルフネイル、マッサージチェアやちょこカフェの提供など、これまでのジムの概念を大きく変えるサービスの提供で、女性顧客を増やすことに成功しています。

チョコザップでは、コンビニジムを謳うように、こうした「トレーニングマシンに留まらない」サービスを今後も増やしていく考えです。

また、ジムにはトレーナーや受付のスタッフを配置するのが一般的ですが、チョコザップは無人。営業時間は24時間で、会員はチョコザップ専用のスマホアプリからQRコードをかざすと入店できる仕組みです。

▪利用者の利便性や使いやすさ、コスパをとことん追求

会員は、全国にある1000店以上のチョコザップを 利用できるため、平日は会社近くの店舗、休日は自宅近くの店舗を利用するなど、生活に合わせて使い分けすることも可能です。

また、服装自由のためウエアに着替えたり、靴を履き替えたりする必要がないのが特徴となっています。このため、すき間時間をサクッと使える、普段着のまま気軽にトレーニングできるという利点もあります。
 
一般的な会員制スポーツジムの月会費は9362円(税別、ライザップ調べ)ですが、チョコザップの会費は月額2980円(税抜)と約3分の1で、全国のチョコザップの店舗を利用できるというコストパフォーマンスの良さも大躍進を支えるポイントになっています。
 
このように、チョコザップは商品を豊富に揃えるコンビニエンスストアのように、健康課題に向き合いながらさまざまなコンテンツを掛けあわせる「コンビニジム」を目指しています。

▪退会率を改善するためのパーソナライゼーション

これまでのトレーニングジム業態の収益面の課題は、退会率の高さにありました。一般的なトレーニングジムでは、入会した会員の半分が1年以内に退会するといいます。
 
それは「筋トレ上級者の設計による、筋トレ上級者のためのジム」になっているため、初心者が気おくれし、「自分はトレーニングに向いていない」と感じ、やがて退会してしまうという悪循環につながっていたためです。

そこでチョコザップでは、マシンの使い方や自宅でもできるトレーニング、正しい食事に関する動画なども充実させることで、お客様とチョコザップのつながりを醸成しています。

また、1回5分のトレーニングメニューの充実や、体組成計、ヘルスウォッチ、アプリを組み合わせたスターターキットを提供することで、運動の習慣化をサポートしています。
 
さらに、チョコザップでは1週間以上来店のない会員に向けてアプリ上で来店を促す通知を配信しています。
 
また、防犯用AIカメラのデータからマシンが使われている頻度などチョコザップの利用実態も解析しています。データ分析により、会員が何を求めているかを理解し、利用率の低いトレーニングマシンを廃止する一方で、人気のあるマシンを積極的に導入しています。
 
26年3月期までに全国で2000店舗の出店を計画しているチョコザップ。今後は、アプリ上でRIZAPのトレーナーによるトレーニングプログラムや、適切な食事を提案する機能の追加を検討しているそうです。
 

▪チョコザップの差別化戦略とは

企業戦略の基本は、①差別化が利益を生む ②戦略とは資源の配分である。この2点に尽きます。
 
チョコザップは、これまでの上級者をターゲットにしていたトレーニングジムと一線を画し、運動習慣のない初心者や女性にターゲットを絞る戦略で差別化に成功しました。
 
そして、受付などの人件費には投資せず、徹底的に無駄を省いた運営で効率的な展開を可能にしています。

一方で、デジタル投資は積極的に行い、利用者とのつながりや満足度の向上など、デジタルトランスフォーメーションで退会率を抑えることに取り組むなど、これからの企業戦略を考えていく上で学べることがたくさんあります。

女性目線に立って、女性が喜ぶベネフィットを、これまでの常識を超えた価格で提供する。チョコザップは、これまでになかったコンビニジムという新市場を生み出すことで、女性の健康や美の向上に貢献し、日本中の女性に支持されていくのではないでしょうか。 
 
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?