吹き抜ける風 陽光の部屋
気持ちのいい季節になった。
もうエアコンはいらない。
部屋の窓を全開にした。
窓からどっと風が吹き込む。
頬や髪に感じる風が少しひんやりして心地いい。
大きく背伸びして、お気に入りの椅子に座った。
窓からは明るい空に浮かぶ秋の雲が眩しく輝いているのが見える。
ほんの少し、夕焼け色が出始めたようだ。
風でレースのカーテンがゆっくり大きくはためいている。
風が部屋の沈滞した空気と陰気を吹き飛ばしていく。
もともとカーテンは好きじゃない。レースのカーテンも端に寄せたままだ。
カーテンで囲まれると、憂鬱になる。閉じ込められた気になる。
夜でも、カーテンはしない。
外が見える方が好きだ。寝ながら見る月は美しいから。
この時期は高い上空に浮かぶ秋雲が美しい。
部屋でゆったりとイスに身を任せ空を眺め、風に吹かれる。
頭の中は今朝聴いていたモーツァルトのメロディーが鳴り響いている。
目を閉じると。輝く雲の残像がキラキラ光る。
レースのカーテンがゆったりと人が舞うように揺れている。
部屋に差し込む日差しは暖かい。
呼吸が静かに深くなっていく。
このまま眠ってしまったら、寝顔も笑顔かな。
もう少し夕焼けが輝きだしたら、ビールを飲もう。
いいなあ。
今日最高の贅沢な時間。
誰も知らない私の幸せ。
絵 マシュー・カサイ「吹き抜ける風」水彩
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