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浅き夢見し

紫陽花の季節。

子供の頃は紫陽花というとその葉陰に蛇や蜥蜴がいたり、ナメクジが這っていたりと暗い湿ったイメージであまり好きではなかった。

大人になってゆっくり眺める時間を持つと、その夢幻的な色の美しさに他の花と違ってこの世ならぬ雰囲気を感じてしまう。

もともと青系統が好きな色なので紫陽花の花の色には引き付けられる。

紫陽花寺などの名所で見ると、一面青や紫や赤色の世界となり、異世界に迷い込んだ気になる。

雨上がりのたっぷり水を吸い込んだ妖艶な花々を夕暮れ時などに見ればもうそれこそ誰彼時であり、逢魔が時、見えざる者に出会ってしまいそうだ。

それを望むから、紫陽花園は一人がいい。

周りに人がいないほうがいい。

もう会えない人や懐かしい人に出会える夢を見せてくれる。

所詮今までの人生も、これからも浅き夢なのだから。


絵 マシュー・カサイ「紫陽花の園」 水彩・ペン





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