夏 川遊び
夢を見た。
子供の頃、よく泳ぎに行った近くの川。
夢の中で私は川の真ん中をスイスイと泳いでいる。
まるで水面を鳥のように飛んでいるか、魚にでもなって泳ぐような速さだ。曇空から時折差し込む日差しが水中も照らしてくれる。
ゆったりと流れに揺れる緑の川藻。
銀光を煌めかせて泳ぎ去る小魚。
聞こえるのは水流の音と、波と風の音。
時々水面から飛び上がり、川全体を眺める。
両岸にも人の姿は見えない。静かだ。
どこまで行こうか。ずっと行けば海なんだろうな。
そんなことをぼんやり考えているうちに目が覚めた。
耳に残る川の水音のせいか、今日は近くの川に来てしまった。
昼過ぎの眩しい日差しの中、軽やかに川は流れている。
懐かしい川の匂い。
煌めく波が誘う。
岸辺のチャプチャプという音もなにか懐かしい。
思わず、靴を脱いで石ころだらけの川に入った。
足裏に感じる石の感覚は子供の頃に感じたままだ。
痛いような、くすぐったいような。
よろけながら脛まで川の流れに入った。
気付かなかったが、川の上にはかなり風が吹いていた。
川に来るまでは、湿気と夏の日差しで汗をかいていて、不快に感じていたのだが、川の中に立つと清々しい風と水音で爽快そのものだ。
足に感じる水の温度も少し冷たいくらいで気持ちいい。
何より、優しい水流を素足に感じる快感。
二日酔いや、頭痛の時には最高の薬だな。
見上げると青い空に夏雲がドーンと浮かんでいる。
思わず笑顔。
一瞬、気持ちが子供の頃に還った。
夏空と川遊び
今日最高のバカンス。
絵 マシュー・カサイ「夏 川遊び」水彩・ペン