ある日の帰り道 光のカーテン
冬曇りの一日だった。
朝は霧雨、午後も降ったり止んだり。
まとわりつくような湿気にうんざりしながら帰っていた。
雨は止んだが、夕方前なのに薄暗い。
空の彼方まで黒く分厚い雲が覆っている。
道にできた水たまりは黒く、寒々しい。
下ばかり見て歩いていると、体も縮こまりそう。
公園を突っ切って帰る近道。
ここは周りにさえぎるような高い建物もなくぽかんと空いた都会の原っぱ。
見上げると空いっぱいに広がった黒雲に亀裂が広がっていた。
薄くなった雲の部分は明るくなり、亀裂からはスーッと薄く光の筋が伸び始めた。
まるで黒雲のすぐ裏に太陽が隠れているような光の伸び方だ。
放射線状に広がる光の筋は、光のカーテンを作り、風に流れる雲とともにユラユラ輝いた。
しょぼくれた街の風景も光のカーテンが広がると一斉に息を吹き返すように明るくなった。
公園にも光の波が広がり、幾筋かの光が近づいて白い光に包まれる。
弱いが、温かく優しい光。
疲れた体と重い気持ちにほんのりとタッチしてくれる。
憂鬱だった雲も、日光を受けて輝いたり白黒のグラデーションで空を飾っている。
やっぱり空は凄いな。
光は魔法だな。
どんな絵や映画より感動する。
うわーという口の形のまま、私は空に見とれていた。
今日出会えた小さな小さな奇跡。
絵 マシュー・カサイ「ある日の帰り道 光のカーテン」水彩