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岩尾俊兵さん読んでみました

 岩尾俊兵さんの「世界は経営でできている」という著書(講談社現代新書)を読んでみました。
きっかけは新聞広告に新刊のベストセラー扱いで目立つように載っていて、最初はいかにものビジネスハウツー本で、著書が東大初の経営学博士とあり、何となくそんな肩書の人がいるという知識がちらっとありましたが、全く買って読む対象には思いませんでしたが、広告に私の敬愛する斉藤幸平さんのコメントが載っており、今最も興味のある新しい「共同体」について、何かしら言及されているのではと思い、あまり期待せずにとりあえず買って読んでみました。
 岩尾さんについての事前知識はなく、プロフィールや風貌も初めて知ったのですが、まだ30代半ばの新進気鋭の学者で、父親の会社が倒産して経済的に困窮したため、中卒で自衛隊に入り、高卒認定試験を受けて、アルバイトをしながら受験勉強して慶応大学に進み、学生起業も経験しつつ、東大の大学院で博士号を取得したという数奇な経歴の苦労人とのことです。
 内容自体想定外でしたが、全編が15のお題の「冷笑体エッセイ」で書かれており、節題は文芸作品や映画のタイトルのパロディで、多くの自虐ネタが挿入されていて、まずもって面白く、思わず笑ってしまう、なかなかない知的なエンタメ性も豊富な本でした。
 特に家庭に触れたお題(第2章)はあるあるで多いに笑ってしまいました。
 目的はもちろん笑いを取ることではなく、本来の経営(会社経営という狭義ではなく、生きることという概念に近い)は「価値創造(🟰他者と自分を同時に幸せにすること)という究極の目的に向かい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げる対立を解消して、豊かな共同体を創り上げること」だ。という提言、主張にあります。
 現代社会においては、価値は有限だから他者との競争に勝って、それを出来るだけ多く獲得するのが正しく、そうすれば幸せになれるという錯覚が蔓延しているが、本来の人生の目的(他者も自分も幸せになる)からずれてしまっており、自分も他者も幸せになれない方向へ邁進してしまっている。
 人間の本質は他の動物とは違い社会的動物であり、他者と共に生きて、理性的、現在だけでなく過去と未来の概念を持ち、歴史的にも価値創造によって幸福を増大させてきている。
 本来価値は有限なものではなく、創造可能なものだから、今のような自己責任過剰の奪い合いの社会から再転換して、原点に戻って、創り合いの社会を目指すべきだという熱いメッセージの本でありました。
 この本で岩尾俊兵さんという存在を認知しましたが、今後露出も増えてくるでしょうし注目していきたいと思います。

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