「失敗の本質」読みました
この本は今回初めて読んだのではなく、もう何十年も前に読んで座右の書としています。
この本を座右の書としている方が有名人含め多くいる名著で、初版は昭和59年(自分が社会人になった年)ですが何度かリバイバルされているかと思います。
簡単に言えば、大東亜戦争(文中の表記)における日本軍の戦い方を分析して、その失敗の要因が現代の日本の組織にも実在(継承)している。
現代の日本人は多くの犠牲を払った失敗から学び、より良い(目標が明確で、成果の出る)組織を作っていって欲しい。といった組織論に関する著書で、戦史研究者よりも組織論や意思決定ないし政策決定論や政治史の研究者(学者)のグループによる共同制作本です。
戦後まもなく80年となり、かなり年数は経っていますが、民間人含め310万人が亡くなられ、憲法や国際秩序をはじめ、現在の日本社会の骨格が敗戦により作られておりますので、大東亜戦争の実態や当時の人々の感情を理解することは極めて重要であると思います。
この本がきっかけになり、半藤一利さんの昭和史の著書や近代化に関する本も結構読んだりしました。
この本の冒頭に書かれていますが、当時だけでなく現代の日本人にとっても「日本はなぜ負けたのか」という疑問、というかそこは押さえておきたい自問がまず第一にあり、国力に大差ある国々を相手にした最初から勝てない戦争であったことを理解すると、なぜ敗けるべき戦争に訴えたのか。という設問に転化します。それについては様々に語られてきたとのことですが、そこまでいくと難しくなってきますが、本書のポイントはそこではなく、いくつかの代表的な戦闘(ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦)の具体的な戦略や遂行過程を時系列に分析して、各作戦での失敗、「戦い方」の失敗を掘り下げるところにあります。
そして諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織にとっての教訓、あるいは反面教師として活用することを狙っています。
軍隊というのは、組織の中でも最も明確な目的を持ち、合理性と効率性を追求した組織であるはずなのに、その組織的使命を果たすべき状況において、しばしば合理性と効率性とに相反する行動を示し、それが組織的欠陥となって失敗を導いたと捉えています。
この本の読書は何かしらの組織に所属して、結果が出ないこと。それ以上に日々の非合理性や不公平感。またそれが常に繰り返されることに苦悩している方が多いかと思いますし、私も長らく企業人でしたが、日本軍と所属組織の類似性、何年経っても繰り返されること。結果が出ないこと(必然か)に辟易しておりました。
企業を離れて、競争に勝つことだけを優先した社会からの変革を志向していますが、ビジネスにおいては勝てない組織というのは、スポーツで勝てないことに近く、すべてが虚しいものです。(残念ということ)
仕事上で関わった方々にも推奨し、内容についての談義もやってきましたが、メンバーの満足感の向上、組織の活性化のヒント(反面教師ですが)が史実を踏まえて書かれていますので機会があれば是非読んでみてください。