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消防団と操法大会

大前提

まず大前提として私は基礎訓練は重要であるし、繰り返し行うことも技術の定着に必要な事であると思う。
その上で、現在の操法大会はあらゆる面でネガティブな要素が多く、改善の必要性が高いという立場だ。

操法大会とは

まず、操法大会とは何か。総務省消防庁より引用してみよう。
全国消防操法大会は、都道府県代表の消防団の皆さんが、迅速、確実かつ安全に行動するために定められた消防用機械器具の取扱い及び操作の基本について、その技術を競う大会です。
(総務省消防庁より引用)
つまるところ、ポンプ車及び小型ポンプの取り扱いを競う大会である。


操法競技の現状

ポンプ車及び小型ポンプの取り扱いを競う大会、と聞くと一般の方は実践に即した競技であるとのイメージを持つかもしれないが、実際は規律や礼式といった部分が重視され、中には実戦で使わない器具や、行わないほうが良い動きをとったりする。
また、この大会は任意参加とされているが、多くの自治体では実質強制参加となっている。
さらに、総務省消防庁は令和4年の全国大会から、外見的な要素を審査基準から除いたとしているが、依然として規律動作や節度は採点項目として存在している。

第29回全国操法大会操法実施要領より

操法競技の問題点

具体的な操法競技の問題点とは。
10年ほど現役で消防団をやっている者の視点から指摘させてもらう。

過剰な負担

練習は自治体、さらには所属分団、または所属部により異なるが、私の所属する地域では「自治体の大会」前に約2か月の期間練習が行われる。
1日仕事をして、帰宅後すぐまたは帰宅途中に練習場へ。練習開始30分前には集まり、器具の準備や選手のアップが始まる。練習時間は2時間、間に10分から15分の休憩が挟まる。練習が終わったら、やはり30分近くかけて片付けと簡単なミーティングを行い、時にはそのまま反省会の言う名の詰め所での酒飲みにもつれ込む。
帰宅できる時間は10時30分ごろ。反省会がある場合は日を跨ぐことも珍しくない。翌日はもちろん仕事があるので、死んだ目をしながら風呂に入り泥のように眠りにつく。練習の休みは1週間から10日に一度。
これが約2か月続くのだ。
これが負担ではなくなんだというのか。
これでもまだ「自治体の大会」に向けての練習なのだ。これが上位大会に向けてとなると、なおさら期間が延びてゆく。
ここで新潟放送のとある記事のタイトルをご紹介しよう。

「今の状態では絶対に入りたくない」地域を守る“共助の柱”消防団の団員減少 背景に「操法大会」か…負担減らす取り組みと求められる“役割”
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/680393?display=1

効率の悪さ

でも消防車を取り扱うにあたって十分な訓練を積む必要があるのではないか?と思う方もいるだろう。
細かいことは省くが、ポンプ車で放水するのに必要な動作は、「PTOスイッチを入れる」「吸管を伸ばす」「ホースを伸ばす」「筒先を装着する」「真空スイッチを入れる」「吐水口を開ける」これだけだ。
スイッチを入れて、伸ばして、スイッチを入れて、開ける。
計器の見方や、筒先の状況確認などはあるが基本、特別な技術は必要ない。
その辺の一般人を連れてきても5時間もあれば一連の動作を覚えられることだろう。
ではなぜ2か月も練習なんてしているのか。
「競技」だからである。
本来習得に時間はかからないが、「競技」にする上で参加チームに順位をつける必要があるため、現場では必要ない規律動作や所作の美しさを競わせているのだ。じつは練習の大半の時間はこの規律動作を身に着けるために費やされている。

動作が細かく指定されている。これを正確になぞらないと減点。

現場との乖離

前項と重なる部分が多いが、操法大会の動作は競技的な要素があまりに強く、現場の動きと乖離していることが多い

画像の動作はどれもこれも、現場では実にどうでもいいことだ。

競技上、タイムを優先するためホースを担いで全力疾走したり、吐水口を(現場に比べて)急に開放し、ポンプのアクセルを一気にふかして送水圧をなるべく早く規定圧ギリギリまで持っていく。
少し考えればわかるが、両手をふさいで全力疾走しては転倒のリスクは上がるし、手を着いてケガを軽減するのも難しくなる。ポンプのアクセルを急にふかせばホースが暴れるし、筒先の人員に反動が急にかかるのでやはりけケガのリスクが上がる。
なお、現場ではせいぜい小走りだし片手は開けておく。送水も「予備送水」と呼ばれる動作をすることになる。ちなみに、競技で予備送水をすると減点だ。
さらに、競技では伝令による伝達を行うが、現場では無線を専ら使用するし、場合によってはスマホで連絡を取ることもある。
筒先もストレートのものではなく、無反動と呼ばれるものを使用する。
まったく現場との乖離がはなはだしい

まとめ だから操法大会は嫌われる

・任意参加とされているが、実質強制参加である。
・現場と乖離した内容
・競技練習が消防団の訓練として扱われている。
・拘束時間、拘束期間が長く負担が強い。

次回「本来あるべき操法、あるいは基礎訓練」

おまけ

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