みんな出口を探してる

都内在住の精神科医。投稿は個人の創作で、実在する人物や団体とは関係ありません。 感想は…

みんな出口を探してる

都内在住の精神科医。投稿は個人の創作で、実在する人物や団体とは関係ありません。 感想は、個人の感想です。

最近の記事

241005品評

ジャンル:ファッション ブランド:Hermes 商品名:シティバッグ 高校生の時からリュックサックを使っていた。 毎日重たい教科書を入れて通学していたので、肩紐がちぎれて、2、3回は買い替えたと思う。 大学生になった頃、社会人の通勤カバンとしてリュックサックが認容される流れが出てきて、気づいたらバックパックというちょっとだけシティ感がある呼び名に変わっていた。 ちょうどファッションにハマり始めた僕は、雑誌やネットサーフィンで見つけたバックパックを色々試していた。 個人的に感

    • やばい

      「天ぷらじゃん、かわいい〜」 同じ車両に乗り合わせた女子高生が呟く。 隣に座っている友人らしき子の鞄には、確かに海老と蓮根の天ぷらがぶら下がっている。 キーホルダーでありがちなデフォルメをされず一目で天ぷらとわかるそれは、僕にとっては精巧で美味しそうなものだが、彼女たちにとっては「可愛い」らしい。 さて、「可愛い」とはなんなのだろう。 漫画やアニメのキャラクター、アイドル、動物、はては無機物まで、人によって対象や定義はそれぞれだが、定食屋で天ぷらを可愛いと思ったことはないし

      • 240830品評

        ジャンル:化粧品 ブランド:napla 商品名:N. ポリッシュオイル 美容師の友人に勧められて購入した商品。 結果的に長く使っている。 30代になってから童顔の自分はともすれば20代に見られてしまうことがあり、これはまずいと思いパーマをかけ始めてから頻用。 流行と自分の好みもあってか、濡れ髪にするスタイルにちょうど良い。 単独での使用よりは、セット力があるワックスに混ぜて艶を足す使い方が、おすすめ。

        • Risk of bias

          =IF(AND(C3="low risk of bias", D3="low risk of bias", E3="low risk of bias", F3="low risk of bias", G3="low risk of bias"), "low risk of bias", IF(OR(A1="C", B1="C", C1="C"), IF((A1="C")+(B1="C")+(C1="C")>=2, "C", "B"), "B")) =IF(AND(C3="l

          ベビースターラーメン

          電車の荷物棚にベビースターラーメンの小袋が1つだけ落ちていた。 一袋だけ投げ入れる人はいないだろうし、これだけなら、わざわざ棚に置くほどの大荷物でもないだろう。 ふと想像したのは、大量にお菓子が詰め込まれた袋からこぼれ落ちた姿だった。 ゲームセンターかお菓子屋さんか、どこかで大量に仕入れ、その袋を棚に置いた際に、運悪くこぼれ落ちたのだ。 通勤電車で最後の1人になれず押し出されて次を待つことになったサラリーマン、乗った瞬間にブザーがなり冷たい視線を感じながらエレベーターを降りた

          ベビースターラーメン

          家路

          サラリーマン達が、電車内の液晶を一心に見つめている。 画面の中では若い俳優がフライパンで作るチーズトーストのレシピを紹介している。 チーズトーストに惹かれているのか、女性タレントに惹かれているのか、自分で作らないといけないのか、今度恋人に作ってもらおうと思っているのか、眼差しを向ける思惑は様々だけれど。 駅に停まりドアが開けば僕らは散り散りになるのだけれど。 その瞬間だけは、僕らは一体になったような、そんな妙な感覚に包まれていたのだ。

          所感240510

          「炎炎ノ消防隊」 大久保篤 講談社 人体自然発火現象という人が突然燃える謎の現象に対する、炎を操る能力を身につけた特殊消防隊員たちの活躍を描いた漫画作品。 自分は完全にアニメから入った口で、確かコロナの自粛期間中にAmazonプライムで見始めたのだと思う。 入りはいわゆる王道なファンタジーアクションで、強力な焔ビトとの戦い、活動をめぐる主人公たちの葛藤、発火現象の謎、暗躍する聖陽教など、複数のテーマを軸に物語は進んでいく。作風は独特と言えば独特で、特にキャラクターの顔に文字

          所感240408

          「精神医療 第12号」 「日本の精神科医療制度は諸外国のそれと比べて問題が多い」と言われるが、具体的にどこが問題なのか、よくわからないことが多かった。 病床数が多いこと、非自発的入院が多いこと、入院日数が長いこと。 確かに、なんでも数が多けりゃ良いというものではないことはわかるし、これらを全肯定するつもりはさらさらない。 ただ、物事には必ずそうなってきた歴史があるはずで、日本という島国だからこそ構築されたこのシステムで、この体制だから救われてきた人たちもいたのではないかと、

          所感240224

          「精神科病棟の青春」 もつお 「みんな1人じゃ抱えきれないものがあってここにいる。たくさん葛藤しながら心の病気と闘っている。そんな当たり前のことにどうして今まで気がつかなかったんだろう」 作者が高校時代に経験した精神科病棟での入院生活を元にした、セミフィクション。 患者として、精神科病棟という場所をどのように体験していたか、どのように当時のことを振り返るか、主人公の加藤さんを通して語られる。 この漫画で語られる精神科病院は、比較的安全度が高く、病棟の中にいる人達も比較的均

          自動ドア

          240222 開かない。 「ここに手をかざしてください」というシールの指示通り、手をかざしたのに、目の前の片開き自動ドアが開かない。 危うく透明な壁に突進するところだった。 なぜだ。さっきの女性はなんの抵抗もなくドアを開けていたのに。私が来る直前で故障したのか。それとも自動ドア側にも通す人選ぶ権利はあるとでも言うのか。 かざしてください、と示してある場所の辺りで、汗ばんできた手をさらに押したり逆に引いたり、上げたり下げたりする。 すると突然ドアが開いた。 良かった。少なくとも

          240107所感

          「ハンチバック」市川沙央 西東京に移住して、白杖を持つ人を多く見かけるようになった。 おそらく東東京よりは住みやすいのだろうという至極簡素な想像と共に、やはり視覚がないということは生活において不便があり、生活圏をある程度制限されるものだという、これまた非常に当たり前のことを改めて認識するようになった。 視覚、聴覚などの五感がうまく働かないことが生活にもたらす影響は、非常に想像しやすい。 一方で、箸を持つ、早歩きをする、口を窄める、といった、24時間機能しているわけでは

          スイミー

          231227 先週から急に気温が下がり、まだ不要だと思ってしまっていたダウンコートを引っ張り出した。 量販店で売っている特に個性のないコートで、街を歩けば同じ物を着ている人を必ず見かける。 洋服、特に防寒具の類にこだわりもなく、そこまでお金をかけることもできないのだ。 職場の最寄り駅はいわゆるターミナル駅で、朝の通勤時間帯にはホームから改札へ、改札からホームへ向かう、大量の人の群れができる。 ダウンやコートでかさが増したこの季節は、より一層「群れ」の感じが強くなり、車内も息

          231210所感

          「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」 国立新美術館 2023年9月20日 ~ 2023年12月11日 近年盛んに行われるようになっているファッションブランド、デザイナーの回顧展。 東京都現代美術館でクリスチャン・ディオール展が開催され多くの集客で話題になったが、国立新美術館では「モードの帝王」イヴ・サン=ローランの回顧展が開催された。 幼少期からファッションに興味を持ち、その才能をディオールに認められ、若くして第一線に躍り出た天才。 男性にとっての正装であったスー

          231203所感

          「We Margiela」 監督: メンナ・ラウラ・メイール 私がマルジェラを好きになったのは社会人になってからだ。 ファッションユーチューバーが、動画でヴァルーズを紹介していたのが1番のきっかけだったと思う。 当時は四つタグ、タビシューズ、ペンキデニム、くらいの、プロダクトを中心としたイメージだった。だからマルジェラが一時期エルメスでデザイナーをしていたと知って驚き、そこからデザイナー自身に興味も持った。 ブランドを立ち上げてからのマルジェラのことを、彼の近くで過ごした

          231207所感

          「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」 監督:渡辺一貴 原作:荒木飛呂彦 脚本:小林靖子 見た人間の過去や後悔を映し出す、黒い絵。 この絵を通して原作シリーズではあまり触れられない過去にフォーカスされたことで、岸辺露伴というキャラクターのリアリティが増し、NHKドラマから続けて、一つのミステリーサスペンスシリーズのような感覚で視聴できた。 高橋一生さんが、これほどこのキャラクターにハマるとは思っていなかった。 美しすぎない、人間らしい艶かしさや、原作ではさらっと流された仁左右衛

          また会いましょう。

          231109 高校生の時、下の名前が自分と同じ友人がいた。 漢字は違うけど、読み方が一緒。 たまたま部活も一緒で、仲良くしていた。 大学生になって、彼が癌になったと聞いてお見舞いに行った。 癌と聞いてびっくりしたけど、病室で会った彼は思っていたよりは元気そうで、少し安心した。 地元を離れてしまった僕が見舞いに行ったのはその一回だけだったけど、その後、無事に退院したと連絡をもらった。 それからはたまに連絡を取り合うくらいだったけど、彼も大学生活を謳歌している様子だった。 数

          また会いましょう。