若いうちに現代音楽もバリバリ演奏しておこう!
実は…ってこともない、プロフィールにも書いている通り、私はフルート吹きでもある。
というより、フルートが私のメイン楽器なのだ。
とはいえ、シニア世代に近くなった私は演奏のお仕事はもう引き受けなくなった。なにしろ視力が悪くなって楽譜が霞んで見えるし、右の上腕骨折をしてからは右腕を上げるのが辛い。
そんな私なのだが、先日、とあるプロジェクトオケに参加してきた。
誘われて参加した理由が
一度演奏したことがある曲
大枚叩いて買った楽器が眠っているのが悲しい(家での遊び半分の練習だけにはもったいない)
このところ理由あって家に篭っていたので、久しぶりに知人友人に会いたい
その参加したプロジェクトオケで私はひとりの若いオーボエ奏者に出会った。
拍子が変わりまくろうが、調子が変わろうが
とても若い子だった。(私の目から見れば我が子のような年齢なので「子」と書くのを勘弁してもらいたい)
演奏する曲は現代曲で、拍子が頻繁に変わる曲だった。
しかも、8分の6拍子から4分の4拍子になったかと思うと4分の1拍子が1小節入り、その後8分の3拍子になり…と言った具合。その上ルバートやらアッチェレランドやらでテンポも頻繁に変わる。
要するに簡単に言ってしまえば、機械的に「1.2.3.4.」とカウントを続けているとどこを演奏しているのかわからなくなってしまう、と言う曲だ。
おまけに4分音符が1拍だったのが急に8分音符が1拍になったり、と言った有様だ。
私はこの曲をすでに演奏した事があった。だが、それでもその曲についていくのは簡単ではなかった。
若いオーボエの子はこの曲を演奏するのは本当に初めてのはずだ。足でカウントしているのがわかる。
が、落ちない。要するにちゃんと曲についていって、数小節休みがあっても、ちゃんと自分の演奏する箇所に来ると落ちることなく演奏できているのだ。
「すごいな〜」
感心して聞いていた。堂々と吹いている。いい音で吹いている。
若いって…信じられないくらいのエネルギーがあるよね
ふと思った。
自慢でもなんでもないけれど、私も高校生の頃は吹奏楽部でのコンクール課題曲などの現代曲で変拍子の曲が出てこようが頻繁に転調しようが、なんの問題もなく(いや、多少はあったか)演奏できていた気がする。
なのだが、
ピアノの生徒さんが、たとえばヘ長調の曲を弾いた後にすぐト長調の曲を弾くと「フラット1個からシャープ1個」に変わっただけで、フラット1個の癖が直らず、シャープ1個(たった1個だぞ!)の曲になっても「シにフラットを付け」て弾いてしまう、ということをよくするのだ。
この事に対して、私も40歳を過ぎたあたりから理解できるようになった。
それまでは「なぜ調の違う曲を2曲弾いたらこんなに間違うんだよ?頭が切り替わらないのか!?」と内心驚いていた。
が、年と共に私の頭の働きも鈍くなってきてしまったらしい。
チャンスがあれば若いうちに
若いオーボエの子があの変拍子だらけの曲についていったことが当たり前だと言うわけではない。
だが、若い方が変拍子やら転調やらの激しい曲(特に現代曲に多い)についていくだけの体力、集中力、気力、柔軟性があるのは事実だと思う。
少なくともリタイア寸前の私に比べると。
私も以前はバロックから現代まで様々な曲を勉強、演奏してきたし、何時間でも喜んで練習し、オケなどのリハーサルが長時間に及んでも、むしろ喜んで参加していた。集中力も持続した。
が、最近の私ときたら「複雑怪奇?な曲はしたくない」「リハーサルが早めに終わるととても嬉しい」「練習しないと演奏できない難しいパッセージがある曲は嫌だ」「ソロはいらない。地味なパートで楽したい」だ。
楽譜をキチンと読むには頼りない目になったし、体はガタが来ているし、大体お出かけが辛い。(今回もリハーサルのための外出が辛かった。会場に到着してしまえば友人らにも会えて嬉しかったが)
昔、あるプロオケのトップ奏者だった人が、引退する5年前ごろだったか、「もうトップを吹くのは辛いから代ってくれ」とセカンド奏者とポジションチェンジしたと言うのを聞いて「そんなものかな?」と思っていた。
知り合いのとあるプロオケのトップのフルーティストさんが「一生トップを吹くのも辛いかと思う」と言っていて、「名誉じゃないのかな」と思っていた。
今ならわかる。年とともに責任あるポジションで演奏するのは辛くなるかも、と言うことが。
チャンスがあれば若いうちに色々な音楽に出会ってたくさん演奏して経験を積む。
年をとってから「私も人生で色々たくさん演奏してきたからもう楽をしよう。若い人に譲ろう〜」となれるよ。
これを書いていたら、映画にもなった「オケ老人」を思い出した。この本の詳しい内容はわすれてしまったけれど、読んだのは2019年。その時にブログにも書いている。
音楽関係の映画や小説はあまり好きではないが、これは期待をしなかった分、意外に読めたらしい。