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【読書日記】感情だけではなく〜「終止符のない人生」
土曜日の朝。
1人朝早く起きてコーヒーを淹れながら「題名のない音楽会」を見ていた。
今日のゲストは反田恭平さんと小林愛実さん、そして務川慧悟さんだった。
ちょうど私は反田恭平さんの書かれた「終止符のない人生」を読み終えたばかりだったので、この放送はとても興味深かった。
この本の著者である反田恭平さんだけではなく、反田恭平さんが著書で「僕を支えた天才たち」として挙げられていた2人のピアニストも共演していたからだ。
番組の中で務川慧悟さんが反田恭平さんのことを
「自由人と思いきや理屈派な音楽家」
だと述べられていて、思わずうなづいてしまった。
いや、私は反田恭平さんとは面識はない。なのにあたかも反田恭平氏をよく知っているかのようなことを書くべきではないな。
ただ、「終止符のない人生」を読んで、やはりこれだけの実績を重ねる音楽家というのは、キチンと理屈(いや、理論)を述べることができる、考慮しているのだな、としみじみと感じたからなのだ。
反田恭平さんは2021年のショパンコンクールで2位入賞を果たした。それ以前も日本で最もチケットが取れないピアニストとして有名だったから、私は「コンクールに出場するの?」とびっくりしたことを覚えている。
著書「終止符のない人生」では、ショパンコンクールの選曲についても書かれている。これまで私は、ピアニストなどコンクールの参加者がどのように選曲をしているのか考えたことがなかった。
課題曲の範囲から適当に得意なものを選んでいるのだろう、教師に勧められた曲を選んでいるのだろう、その位にしか考えていなかった。
反田恭平さんは違った。コンクールで弾くプログラムは考えに考え抜かれたものだった。これまでのショパンコンクールで弾かれた曲を調べあげている点には驚く。
音楽家として生きていくためには大事なことであると思うが、反田恭平さんは「エンタメ飽和時代に音楽が生き残る道」を模索し、そのための戦略を考えだし、実行しているのだ。
ただ、これまでの慣習にのって演奏会をするだけではなく、クラシック音楽のレーベルを設立したり、オンラインコンサートを始めたり、そして音楽学校の設立を計画したり。
聴衆が求めているものを探り、その曲を弾く。
クラシック音楽が生き残る道を探り、そのための事業を立ち上げる。
その時代にあったコンサートを開く。
ただ自分の好きなことをやっているわけではなく、音楽を愛しているがゆえにその音楽をいかに広めていくか、どのようにしたら多くの人々の役に立てるのか。
実に様々なことを考え、色々なプロジェクトを立ち上げている反田恭平さんには、確かに「終止符のない人生」であろう。
反田恭平さんの半生、ピアニストになった経緯、ロシアでの留学生活やショパンコンクールの話、そして日本でクラシック音楽を広めていくためのプロジェクト。
どれもとても興味深く、去年一度読んだのだが、それでは足らず、昨日二度目を読んだ、という次第だ。
ピアノの好きな方へ薦めたい。音楽を生業にするにはただうっとりと弾くだけではなく、しっかりと理屈(私が理屈というのはおこがましい。理論だ)も持って行動しているということを。