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視線

ご主人様の膝の上に丸まって
ボクはずっとあちらを眺めてる
右へ左へ忙しく動くキミを
ボクはずっと静かに眺めてる

ボクにはよくわからない魔法のことばで
ときどきボクに語りかけてきてくれるキミは
たぶんボクとは違う生き物で
突然現れてにこにこと近づいてきて
ときどき背中を撫でてくれるそのとき以外は
たぶんボクとは違う世界にいる

ご主人様は膝にボクを乗せて
いつも誰か知らない人と話してる
おいでと言って膝に乗せてくれるけど
なかなか撫でてはくれない

ボクは顔を見ながらボクの世界のことばで
精一杯の声で話しかけてみるんだけど
たぶんボクのことばは届かない
キミはそんなときにこにこと近づいてきて
よくわからないけどよくわかる魔法のことばを
そっとボクに手渡してくれたんだ

ご主人様の膝の上で顔を見上げたら
またキミに気づかずに知らない人と話してた
もらった魔法のことばのこと
教えてあげようと思ったんだけどな

今日もまた膝の上で丸まったまま
あちらで忙しく動くキミを眺めてる
たぶんボクのことばはキミにも届かないけど
キミのことばは何となくわかる気がするんだ
今日もまた背中を撫でにきてくれたらいいな
魔法のことばをこぼしながら
また背中を撫でてほしいな