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生活期における介護職の進化

介護というキーワードが持つ意味合いは凄く広いですね。施設における介護であったり、家族や当事者にとっての介護であったり、地域にとっての介護であったりと、それぞれの立場によって見え方は変わるので、今回はあくまで介護を職業とする専門職の立場で、これからの介護職の歩むべき方向性について考察したいと思います。


家族の深い言葉

以前にある利用者の家族がこんな言葉を口にされていました。『介護は人を活かしもするけれど、時に人を殺しもするね。』と。それまではウチの訪問介護が関わらせていただいていたのですが、
サービス量を増やす必要性が生じて、別の訪問介護事業所が加わった際に、しみじみと語られていたことを今でも鮮明に記憶しています。


介護の質の評価の難しさ

飲食店に行ったら、顧客がその店の評価はできますが、介護の評価って難しいんですよね。食事が美味しいとか不味いとか、接客マナーが良いとか悪いとか、私たちが外食に行った場合にはその店を評価できると思います。それは味に関しては自分自身の感覚として評価できますし、その他の外食店のことも知っているから比較もできるからですね。その点、目の前で繰り広げれている介護が質として良いのかどうかを、顧客側が評価することは難しいでしょう。はじめて利用する介護が質の基準になりますし、他の事業所との比較はできないので、何か思うことがあったとしても、どこもそんなものなのだろうと受け入れる他にないわけですね。


比較による質的な評価

訪問介護もまさに同様で、はじめて利用した際には、その事業所の提供するサービスが訪問介護の質の基準になるわけで、その質が高いのか低いのかを顧客は判断できません。ただ、複数の訪問介護が入った際には、比較の材料があるのではじめて顧客がサービスの評価をすることができるようになります。上記の利用者の家族の言葉は、まさに比較によって質的な評価を生々しく口にされたということなんですね。

『介護は人を活かしもするし、殺しもするね。これは本当に怖いことだと思うよ。誰もが気が優しくて良い人だけど、悪意なく人を殺するんだから…』

これって本当に重たく突き刺さる言葉ですよね。もう何年も前の一コマなのに、まるで昨日のことのように鮮明な記憶として残っています。そして自分たちは、この比較による利用者やら家族の言葉を、注意深く聴き取りながら、自分たちの提供するサービスの質を向上させてきました。施設においても満足度調査等はあると思いますが、やはり複数の施設を経験していない利用者や家族のご意見は、それはそれで重要ではあるけれど、過大であったり過小であったりもするので、比較による質的評価はより深みを増すという事実はあると思います。そして、その質的評価から利用者や家族が具体的に何を求めているのかを慎重に抽出することは、これからの介護職の進むべき方向性を考える上でとても大切になると思います。


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