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もう一つの「愛の讃歌」

エディット・ピアフが歌う「愛するって素晴らしい」”Il fait bon t'aimer” が1950年のリリースだと気付き、私は驚愕した。
その理由は、前年の1949年にある。
それは、ピアフの人生にとっておそらく最も重要な年だったからだ。
その年の10月28日に彼女の最愛のマルセル・セルダンが飛行機事故で亡くなったのだ。
ピアフにとって人生で一番衝撃を受けた出来事、その傷がまだ癒えない翌年に、「愛するって素晴らしい」という名のシャンソンを歌うとはどういうことなのだろうか?

「愛するって素晴らしい」の歌詞

それでは、まずこのシャンソンにはどんな歌詞がついているのか、その辺りから話を始めたい。
ストーリーは、以下のとおりだ。

私の悲しみは、あなたによって粉々に飛び散った。
あなたは、私の涙を「君は美し過ぎてこんな宝石には似合わない」
と言ってくれた。
私はあなたのために微笑むことを学んだ。
そして、その日から死ぬのが怖くなった。
死ぬ前にこの世で天国を知ってしまったから。
愛することって、なんて素晴らしいのだろう!
目を閉じて身を寄せる時、あなたは私が愛するための存在のようだ。

誰のことを歌っているのか?

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