
レミゼ以外のヴィクトル・ユーゴ
或る音楽家がポッドキャストで「ヴィクトル・ユーゴってこんな美しくてリズミカルな詩を書く人だなんて知りませんでした。」と言っていた。
ガブリエル・フォーレなどがユーゴの詩に曲を付けて歌曲としているのを紹介する時の解説だった。
ヴィクトル・ユーゴが小説だけでなく詩も書いていることは、日本では嘗ては知られていたが、今ではほとんど知られていない。どうしてなのか?
ミュージカルの影響力
それは、ミュージカル「レ・ミゼラブル」(愛称・レミゼ)のせいだと言っても過言ではあるまい。ロンドンのウエスト・エンドでは1985年以降ロングラン公演が続いているし、日本でも毎年のようにキャストを変えて東宝が帝国劇場で日本語版を上演している。
ポスターには、ヴィクトル・ユーゴー原作と書かれているので、今の若い人たちも名前を覚えている。
最近フランス文学はめっきり読まれなくなったので、モーパッサンやバルザックの名は忘れ去られてしまっているが、レミゼのおかげでヴィクトル・ユーゴは若者でも知る人は多い。
フランス文学を愛する私とすれば喜ばしいことだが、レミゼ一辺倒の捉え方は些か寂しい気持ちがする。
実は、彼はロマン派の詩人でもあるのだ。
そのことを今回は強調したいと思う。
若き日の懐かしい歌
それでは、ユーゴの一片の詩を私の日本語対訳でご紹介したい。
Vieille chanson du jeune temps
若き日の懐かしい歌
Je ne songeais pas à Rose ;
Rose au bois vint avec moi ;
Nous parlions de quelque chose,
Mais je ne sais plus de quoi.
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