がんの告知に思う、若かりし頃を思い出す
夕方、職場から家に帰ってくると封筒が届いていました。私が新卒で入った病院の先生からの同門会のお誘いでした。
私が学校を卒業し、看護師になったのは30年以上前になります。最初に勤めた病院は、入院患者さんの8~9割はがんという、がん治療を中心とした国立の小さな病院でした。
今はもう、大学病院に統合されてなくなっていますが、たった2年勤めたこの病院での経験は、私にとって今でもかけがえのないものです。がんの患者さんと向き合った新人看護師の私、当時の気持ちを思い出し書いてみようと思います。
がん告知に思う、私の思い
私が看護師になった頃は、がんの告知というのは一般的ではなく、本人にはうその説明をし、家族にだけ本当のことを説明し治療を行う、そんな時代でした。本人はどう感じているのだろうか、本当の病気に気付いているのだろうか、そんな心配をしながら患者さんに関わっていたことを思い出します。
今は、がん告知は一般的になりました。
本人に病名を隠したまま治療を続けることは難しく、むしろ家族や医療者への不信感が募るなど告知をしないことの弊害が明らかになり、今は原則としてご本人に病名を告げる医療施設が増えています。
今はインターネットでいろんな情報があふれていますので、昔より患者さん側の知識も豊富になっていることも要因の一つかもしれませんね。
私が看護師になりたての頃は、まず家族に病気の説明をし、本人に伝えるかの相談をし、家族が「言ってほしくない」と言えば本人には伝えない、そんなケースが多かったように思います。でも治療を行えば患者さんはなんとなく察するのです。私達看護師が出来ることと言えば、患者さんのベッドサイドで傾聴し、患者さんの言動から「なんとなくわかっているのかもね。」という気持ちを察したり・・・。とにかく気持ちに寄り添うということを大切にしていた気がします。
新人の私に、患者さんがどこまで心を開いてくれたかわかりませんが、時間を見つけて気になる患者さんのベッドサイドに言っていました。なので、当然、仕事が終わらなかったですね(苦笑)。
この時、患者さんの話をきくということをかなり勉強した気がします。上から見下ろすのではなく、目線を合わせるとか、アドバイスをするんじゃなくて傾聴するのだとか、そんな基本的なことがとても大事だと学んでいきました。
そんな中で、本人へのがんの告知ってやっぱりした方がいいんじゃないか、そんなことも思ったりしました。でも、人によるところは大きいよなぁ・・・とか、告知といっても段階的に行い反応を見ながらどこまで伝えるかを判断していくのがいいんじゃないだろうか、とか、いろんなことを考えました。
当時の医師はすごくいい先生が多くて、先生たちと合同の勉強会に参加させてもらったり、こんな私の悩みを聞いてもらったりもした気がします。(昔すぎて美化しているかも?)
今の私は、基本的には告知をすることに賛成ですが、どこまで話すかは人によるという考えに至っています。ただ、家族になると、どう感じるかわかりませんが。
以前の病院で
以前勤めていた病院の外科の医師で、すごくものをハッキリ言う先生がいたんです。そして、告知は当たり前だと言って、検査をして診断がつけば外来の診察室で普通に告知をする、そんな先生でした。
私には、正論ではあるけれど心がないと思ったんですよね。
と言うのは、告知をされた患者さん家族の気持ちに寄り添うという配慮が全くなかったからなんです。やっぱり、患者さんとご家族は告知された時って頭が真っ白になって、あとの説明が頭に入らなかったりするんですよ。
だから、告知をする時には、看護師が同席し、その時の患者さんご家族の反応をみて、一緒に説明を聞いたものとして、説明後にお話をお聞きして支援を行うということが大切だと思うのです。
どんなふうに説明を理解しているのか、今どんな気持ちなのか、どんなことがわからなかったのか、先生にききたいことはあるか、等々。先生の前では聞けないこと、話が出来なかったことを話せる場が必要だと思うのです。
告知ってすればいいだけじゃなくて、告知をすることで、一緒に治療を頑張っていきましょうっていうスタンスが大事なんじゃないかって思うんですよね。
封筒の中の言葉
冒頭に紹介した、私が新卒で勤めた病院の同門会の案内の中に、先生からみんなに宛てた手紙が入っていました。今までのこと、そして自分の近況などがつづられた中にあった一文にあたたかさを感じて、このnoteを書いています。
やっぱり、あの病院で仕事をした2年間は、私の宝物だなぁと実感した一文でした。
医療の現場は、理想と現実がつきつけられるところではありますが、でも、こころある医療者もたくさんいるんですよね。
昨日に引き継続き、過去の自分に戻ってしまいましたが、また、前を向いて頑張っていこうと思います。
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