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時間軸で人をみることの大切さ
私は、病院で仕事をしています。
主に入退院に関わる仕事をしていますので、患者さんのご家族と話をする機会が多くなります。
先日、病院の運営方針が話合われ、病床数を満床に近い形で運用することが示されました。つまり、私の部署の「入院を入れる」という業務の強化が求められたのです。
そうすると、入院前に行っている面談業務の効率化が求められることになり、生活歴や既往歴などたくさん聞く必要はないと言われてしまい、なんとなく寂しく感じてしまいました。
人を捉えるには
私の勤める療養病院に入院する患者さんは、ほとんどが高齢の方です。つまり、長い時間を生きてきた方になります。
入院する前に家族と面談を行うのですが、病院でできる治療、出来ない治療の説明に加え、今までの生活歴や病歴などの確認、今の病状の理解が出来ているか、などを聞いたり確認したりしています。
長い時間を生きてきた高齢の方は、当然生活歴も長くなりますし、病気をたくさんしてきた方は、病歴も長くなります。
時間は有限ですから、面談の時間の中で、すべてを聞くわけにはいかないのですが、ある程度、患者さんがどういった方かをイメージできるくらいのことは聞くようにしています。
ホントに表面的なことしか聞けていないだろうと思うのですが、全体像をなんとなくつかめるように、そして私自身も、その患者さんのことがなんとなくイメージできるように聞いています。
性格や、性格にまつわるエピソードを聞いたり、趣味や好きなことはあったのか、食べ物の好き嫌いだとか、どんな仕事をしていたのか。どんなことに価値観を持っていたのか、家族の関係性なども聞いたりします。
病気療養をする上では、あまり関係ないことかもしれません。でも、病気だけをみるのではなく、その人をみると考えた時に、そういったその人の人となりがわかることって実はとても大切なんじゃないかって思うんですよね。
私が出会った患者さん
以前、勤めていた病院で救急車で来院した患者さん。80代の女性、かなりの円背で受け答えもやっと。ベットで寝ている姿をみたら寝たきりだった?って感じの方でした。
いろいろ話をきくと、たしかに円背はひどかったのですが、普段は自転車にのって畑に行って野菜作りが生きがいの方だったそうです。話を聞かなければ、まったく想像もつきません(笑)。
そうすると、病気の治療を行う過程で、リハビリなどの関わり方も変わってきます。
以前関わった、癌の終末期の患者さん。70代女性。
もうずいぶん弱っていて、自分で自分のことをすることが出来なくて、自宅での生活は難しいと考えて入院してきました。
もともととても手先が器用で、自宅はご自身で作った布小物であふれている上に、庭仕事も好きで庭は季節のお花がいつもたくさん咲いていたそうです。
ご主人と結婚してから、ずっと家のことを守ってきて、料理なども得意でいろんなスパイスを揃えていたりしました。
家で過ごすことは出来なかったけれど、家や庭のの写真を見せてくれたり、家族の話をする時はいつもよりニコニコしていました。
こういった一見入院生活に無駄な情報も、一人の人として関わっていく時には、とても重要な情報になってくるのです。
時間軸で想像する
よくね、入院してきた患者さんをみると、その姿がすべてって錯覚してしまうことあるんです。
でも・・・
家族に見守られて生まれてきた時
やっと歩いた時
学校で勉強していた時
就職してお給料をもらっていた時
結婚をした時
お母さんになって子育てをしている時
等々
そんな時期が誰でもあるのですが、今目の前にいる患者さんしか見えていないことってたくさんあるのです。
つまり、80年生きてきた今の姿は、今の一瞬の姿であり、長く生きてきた80年のうちのほんの1か月の姿なのです。
そう考えると、見方が変わってきませんか?
長い時間軸で人を捉える。
すごく難しいことですが、視点を変えることで見えてくるものもあるのかもしれませんね。
まずは、身近なご両親や祖父母の時間軸を考えてみるのも面白いかもしれないですよ(笑)。