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最後に会うことが叶わなかった患者さん

今は、富山で生活している私ですが、2年半ほど前までは千葉の病院に勤めていました。

千葉の病院で10年以上関わってきた患者のEさん。当時の同僚から「Eさんが具合が悪くて入院しています。」と連絡がきたのが2週間ほど前。ずいぶんと意識がなくなっていたEさんですが、関わりの深かった人の名前を言うと反応があったそうで、その中に私の名前もあったそうです。

なんとか、会えないだろうか・・・そんな思いから、友人が茨城の息子さんのところに車で行くというので、便乗して行ったのですが、願いは叶わなかったのです・・・。



Eさんとの出会いと関わり

千葉の病院に看護師として勤めていた頃、病棟での勤務ではなく、入退院する患者さんの支援を行うのが私の仕事でした。そして、その中でも、主に医療依存度の高い患者さんの支援をするのが私の仕事でした。

医療依存度が高いってどういうことかと言いますと、例えば、酸素を使っている、食事が摂れず胃ろうからの経管栄養あるいは点滴をしている、気管切開をしている、人工呼吸器をつけている、などです。

そういった医療を必要としながらも自宅で生活する患者の支援を行う仕事を主にしていました。

Eさんは40代で脳梗塞になり、経過の長い患者さん。私が出会った頃は、気管切開をして、胃ろうがあり、車いすに乗り、吸引器を持って、外来に来ていました。気管切開部のカニューレや胃ろうの交換を外来でしていましたので、その介助をしていたことから、関わるようになりました。

私が関わるようになってからも入退院を繰り返し、途中、人工呼吸器が必要な状態となりました。そして、私は、Eさんの家に主治医の先生と訪問診療で伺うことになったのです。そうして、自宅で困ったことがあると、私が病院の窓口になって対応するようになりました。

それでも、自宅で娘さんたちが交代で介護をし、サービスの利用もしながら生活していましたし、家族で旅行をすることもありました。

最近では、7月にも家族で10日間の旅行をしたそうです。これが最後かもといいながら出かけたそうです。人工呼吸器をつけながらの旅行ですが、それでも、ソフトクリームを食べたり、ラーメンを食べたりしたと聞き、びっくりしました(笑)。

そんなEさんですが、9月に具合が悪くなり、9月半ばに入院。だんだんと容体が悪くなり、Eさんに関わっていた私の同僚が心配して私に連絡をくれたのが10月1日でした。

Eさんが呼んでいる(と勝手に思う)

ちょうどその2日前に近所に住む友人が、「連休に茨城に住む息子のところに遊びに行こうと思うけれど一緒に行く?」って声をかけてくれたのですが、正直迷っていました。

そして、Eさんの連絡が入り、勝手に呼ばれていると思った私。行くことに決めたのです。ただ、正直、状態を聞く限り私がいく連休までEさんは頑張れるのか、不安はありました。でも、後悔はしたくないと思い出かけた12日。

向かっている最中にEさんは亡くなってしまいました。間に合わず・・・自然に涙があふれてしまいました。でも、家族は自宅に来てくれないかと言ってくれたものだから、翌日に自宅へ訪問させてもらいました。

むくみと黄疸が残るEさん、でも穏やかな表情でした。最後に間に合わなかったけれど、娘さんたちと思い出話もできたし、やっぱり来て良かった。

Eさんが呼んでくれたのかなって、勝手に思うことにしました。

介護が主の生活から・・・

さて、ここからは娘さんたちの今後について考えてみたいと思います。

Eさんは若い時に介護が必要な状態となり、娘さんたちは介護を主に生活をして20年以上になります。途中、Eさんの夫、娘さんたちのお父さんの介護、お見送りもありました。そして、介護のスタイルも変わってきたと思います。

娘さんたちの生活の中心が介護だったと言っても過言ではない、そんな生活を長く続けてきました。

帰り際に、私が娘さんに「これからしばらくはしなきゃいけないことがたくさんあってバタバタしているから気がまぎれると思うけれど、落ち着いた頃に疲れがでたり、ぽっかりと気持ちに穴があくかもしれないね。」って話したのですが、娘さんは「ずーっとかーちゃんの介護が中心の生活だったから、これから自分のために生きるってどうしたらいいんだろうって思う気持ちもあるんだよね。」って話してくれました。

長い介護生活、私には想像がつきません。介護を生活の中心に生きてきた時に、介護のない生活がイメージつかないのですよね。

本当は、自分の大切な時間を自分のために使うのが一番いいんでしょうけれど、それをしてこなかった娘さん達。これから、どう生きていくのか。

時間は逆戻りは出来ないので、これからの人生をまた違った幸せを見つけて過ごしてもらいたいなぁと思った私。

また、機会があれば会って話が出来たらいいなぁと思っています。患者さんの家族と医療職の関係ではあるのですが、なんとなくそれを超えた感覚というのでしょうか。私に連絡をくれた同僚も同じ思いなんじゃないかな。

とりとめのない話になってしまいましたが・・・。
たくさんのことを教えてくれたEさんのご冥福を心からお祈りいたします。



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