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だれよりもブスな女の子の話

「きりこはブスである。」

そんなとんでもない一文から始まる小説
「きりこについて」 著:西加奈子

私のからだの構成要素になってるくらい大事な本。

毎日毎日見た目を気にする私たち。
今は整形なんかもインフルエンサーが簡単に紹介している時代で顔面至上主義なんて言われたりする。だから多かれ少なかれ自分の見た目について思うところがあるんじゃなかろうか。

私も中学生になった頃ひどく顔で悩んでいて、そんな時にこの本に出会った。
第三者視点から語られるきりことその周りの人々の人生のお話。

ネタバレをしてしまうと最後の最後まできりこはきりこだった。何も変わらなかった。


⚠️ここからは内容について結構触れます

はじめに書いたように、主人公のきりこは大変ブスである。美形の家系に生まれたというのにその家系一人一人のコンプレックスを全て受け継いだ奇跡のブサイク。

しかしきりこのパパとママはきりこが大好きでとびきりの愛情を注がれて育つ。世界一可愛い!と言われて生きたきりこは自信とリーダーシップに溢れた子になっていた。

きりこが小学生になったある日、恋をしていた男の子に「ぶす」と言われてしまう。カリスマ性とリーダーシップが光り人気者だったきりこ。でもその言葉で「ブス」であることにみんな気づいてしまった。

魔法が解けたように変わっていく周りの態度。でも最高の愛情を受けて生きてきたきりこは「自分は可愛くない」ことが理解できない。

「私は可愛くない?こんなに可愛いのに?」

他人からの意見と自己評価のギャップが息苦しさを生み、きりこは引きこもるようになる。絶望の日々の中で感情を通じ合わせた愛猫と日々を送り、悩みを抱える人たちに出会う。
周りを巻き込み、救い、また傷ついて、それでも生きる。苦しみと向き合い自分を見つけていく。

作品の中できりこに出会う人達はみんな何らかの分野でマイノリティに属している。
宗教、ジェンダー、愛情欠陥。どれも普通じゃなくて、だからこそ私達に寄り添ってくれるきりこがいる。ずっと欲しかった言葉をふと落としてくれる。

ハンデを持って自分を生きる苦しさも、自分として生きたゆえの豊かな光も見せてくれる。本当に素晴らしい一作だ。

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標準語で紹介したが、この本は全員関西弁だ。内容に反してユーモアもあって大変読みやすいからぜひ読んでほしい。

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