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【読書感想文】権力とは、そんなにも甘い味がしてやめられない中毒性のあるものなんだろうか?⭐︎山崎豊子「不毛地帯(五)」を読んだ⑥

猛暑が続いております。
沢山の本の中でも、
やめられない止まらないおすすめ本を
ご紹介しております。
エアコンのきいた室内で読書をお考えの方
のお役に立てれば幸いです✨🕊️✨

今回はなるべくネタバレ無いよう努めましたが、そうでないと感じられた方、すみません🙏
読んでみたくなった方の最高の時間をお祈り申し上げます✨

はじめに、全編を読了し、
ほんとに良い読書体験に感謝!
と強く思っている。

ラストは怒涛の展開で、激しく泣いた!
かつ、山崎氏の作品は伏線回収がすごい。
それぞれ収まる所に収まり、
ヒールは最後にバタバタ慌てる、という。

著者によっては、後味の悪い長編小説だったり、する場合もあり、そんな際には深く後悔するのだが、

山崎豊子氏の場合、それは(ほぼ)無い!
今回は全然無い!


五巻を少し丁寧にさらっていこうと思う。

電話に出て来たのは日本の政治、経済のダーク・サイドを動かしている"鎌倉の男”の代理人であった。
「実は、私の方の先生があなた様に是非、お目にかかりたいと申しており、ご都合のおよろしい日時を承りましたら、お車でお迎えに参上します」(中略)
萱岐が正座し、初対面の挨拶をすると、男は白鞘の短刀を背にした座に坐り、
「壹岐さん、私はあなたを存じ上げていますよ、世が世ならこうして親しくお付合い出来る方ではありませんものをーー、梅津参謀総長ご直々の命令で、終戦の詔勅を携えて、関東軍への軍使として新京へ赴かれ、日本へ帰る司令部偵察機がありながら、航空隊の傷病兵にたった一つの座席を譲り、ご自分はシベリア抑留の身となられた.....、ああいう状況で命の順位を譲ることなど、なかなか出来るものではありません」
真底、感服するように云い、(中略)

「不毛地帯(五)」山崎豊子

出た、"鎌倉の男"!戦後小説に、
色んな立場と名前で登場する、
都市伝説的人物。

ここでは、誰から聞いたのか壹岐の事をよくご存知で(自分は読者なので知っているだけだが)。
で、この男の口より語られた一巻内容を思い出し、
壹岐はいつどこでもこんな風な人だったんだった、と思い返す。

「いやいやこの連中も、もとは暴れん坊が多く、社会のごみのような者たちだったのですよ、ごみは一カ所に集めておかないことには、世間さまにご迷惑をかけますので、私のような者が、社会のごみを撒らかさないよう訓練し、かためているのですよ」
政界との繋がりを口にする一方で、暴力行使をちらつかせた。(中略)
威儀を正してお辞儀をした。国士の仮面をかぶった男の慇懃さが、べったりと汚物を塗りつけられたように、壹岐の顔に貼りついた。(中略)
汚濁した泥水の渦の中にいる自分がやりきれなかった。

「不毛地帯(五)」山崎豊子

この後、壹岐は比叡山に行く。
比叡山では秋津千里の兄の賢澄が、
厳しい修行を積んでいる。
その清冽さに触れたくなって、行って、
心のおもりを吐露するように会話し、
京都では旧友(韓国の李)に会い
簡単な言葉で言えば、リフレッシュする。

会社及び国のためとは言え、
こんな巧妙な脅しを受け、
あくまで常に相談される側であって
相談する人もいなくて重圧だし、
旧友がいるとは言え孤独だったと思う。

それだけ強靭な精神と
明晰な頭脳が必須、これをやり通すには。
少し強いくらいの精神力では、不可能。

大きなお金が動くし、動かすために
汚濁した世界の暗黙のルールに従わざるを得ない場面にも直面する。

「実に見事な孔雀でございますね、以前、総理手ずから餌をやっておられるお姿を拝見しましたので、孔雀がことのほか好むと聞いた配合飼料をお持ち致しました」
壹岐は上衣の両ポケットから厚さ五センチほどの配合飼料の箱を二個、取り出してテーブルの上に置いた。(中略)二つの飼料箱の中には、餌はほんの僅かで、百万円の札束が五つずつ入っていた。

「不毛地帯(五)」山崎豊子


著者が、架空の物語であり出来事だと先に断っているのでその前提で書くが、
こんな風に、賄賂を送って権力者に力添えしてもらう事は「権力」って概念が出来た太古の昔からあった事だろう。古いし野蛮だ。
この場合の壹岐の判断としては、
嫌でもやるしかない状況だったわけで、
古いと言われようが誰に何と思われようが、
やるしかなかったわけだが。


でももし自分が権力者だったら、
賄賂をまわりくどく、せびるものなんだろうか??
その賄賂(資金)が集まらなければ権力を維持できないってなったら、と正当化して欲しくなるものなんだろうか?
権力や地位や名声とは、そんなにも甘い味がしてやめられない中毒性のあるものなんだろうか???

時代は物凄いスピードで進んでいるから、
こんな古いし野蛮だ、な思考が、
変化する時代の到来を待つ。

これまでそういう時代だった事は、
しょうがない。

ある程度ほど良く、
時代の流れに乗ってないと、
変な事になっちゃうから、待つしかない
と自分は思う派。



すみません、やっぱり
最終巻は一回では書ききれませんでした。
次回は思う存分ネタバレしちゃいます!!


ネタバレ気にならない方、

                 ⑦へ続く

最後まで読んで頂きありがとうございました❤️
ここまで読んでくださった皆様の幸せを
心よりお祈り申し上げます❤️❤️❤️

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