エッセイ 「ガハハ系」
私は、人をカテゴライズして、そのカテゴリーに名前をつけるという性格の悪いところがある。でも、それは大体がその人たちの迷惑な要素につけることが多く、その人たちを小馬鹿にしてポップに昇華することで自分の感情をコントロールしようとする試みであるとも言えるので、必ずしも私のせいではない。
私が人の種類に名前をつけるようになったキッカケは、映画評論家、ラッパーの宇多丸さんがラジオで映画「冷たい熱帯魚」の評論をしている際に、でんでん演じる非道な連続殺人犯のことを「ガハハ系」と呼んでいたことである。このガハハ系がどういうタイプかというと、簡単に言えばジャイアンである。人懐こく、世話好きで、恩着せがましく、声が大きく、なんでも自分の思い通りにしようとして、逆らうとすぐキレるが、どこか魅力があり、人によって好き嫌いが分かれるタイプ。である。理不尽で幼稚なのであるが、そのパワー系のコミュニケーションゆえに、大体の人が下手に出て、いつの間にか支配下に置かれてしまうのである。
この要素だけ聞くと嫌な要素が目立つが、私はガハハ系の人と割と馬が合う。なぜなら、私は嘘の許容範囲が狭くイジリに打たれ強いので、歯に衣着せぬ物言いをする彼らとはスムーズで楽しいコミュニケーションができるからだ。すぐキレるところだけはいただけないが、私にとっては比較的関わっていて楽しい人種なのだ。
私が今まで出会ったガハハ系は、大学教授や職場の上司などである。彼らは、出会って初日で家族のような距離感で接してくるので、お返しにこちらが同じくらいの距離感で接してあげると彼らは大変喜ぶ。タメ口を混ぜて話したり、軽くイジったりしてあげると大変喜んで気に入ってくる。大学教授の場合、私の論文の担当になったのであるが、余っている研究室を一部屋与えてきて、パソコンを自腹で買ってその部屋に置き、「今日からここで研究をしろ、必要なら冷蔵庫とハンモックもそのうち置いてやる」と言ってきた。しかしながら、私がその部屋で研究や勉強をしていると、しょっちゅう部屋にすごい勢いで入ってきて、私がその部屋やパソコンを使っているかどうか恩着せがましく確認してくるので落ち着かなくなり、家で作業をするようになると、不機嫌になり私に冷たく接するようになったため、仕方なく半分くらいはその部屋を使用するようにしていた。
その教授は味方も敵も多く、私以外にも気に入られた生徒が常に何人かいた。彼らは私より隷属根性があったので、教授の言うことはなんでも聞いて、発言やファッションまで同じになり、教授が褒める生徒は皆でよってたかって褒め、悪口を言う生徒は皆でよってたかって嫌っていた。そのため、私は陰でその生徒たちのことをデスイーター(映画 ハリーポッターにて、ヴォルデモートが支配する闇の軍団)と呼んでいた。
そんな私も、デスイーターたちの標的にされる時が、大学院の修了間近にきてしまったことがある。私のすでに就職していた恋人(その恋人もデスイーター)が、仕事の営業が辛く辞めようと思っていることをその教授に話してしまったのである。教授は3年は我慢してから辞めるように説得しようとしたものの、心がすでに折れていた恋人がその説得に反して「無理です辞めます」と言った日を堺に、教授は1日30回は電話をかけ、恋人がその電話を無視していると職場にまで電話をかけて無理やり辞めないように言いくるめたのである。
そして、その最中に「あいつ、仕事辞めるって言ってるぞ?あかんやろ」と言ってきたので、私は恋人に相談され応えた時と同じく、
「これからいくらでも仕事は見つけられるし、どうしても辛いなら辞めたらいいと思います」と言った。
その時は、教授はふーん。と言って私の研究室から去っていったが、そこからあからさまに冷たくなり、デスイーターたちがフォローしている教授のTwitterにて「あいつの目は濁っているから、話さないように」という指令が下ったのだ。
デスイーターなら、膝から崩れ落ちてショックを受けると思うが、私は、教授とデスイーターたちの関係を小馬鹿にしていたので、イラッとしただけで済んだ。しかし、恋人にはもう教授とは関わって欲しくなかったので、そうお願いしたが縁が切れず毎日のように電話していたので、そのことで半年間喧嘩が続き別れてしまいました。しかしながら、私はハイカロリーに生きているガハハ系が好きです。おもんないよりマシなんだなあ。