ヨルシカしか聞いてない
ヨルシカというアーティストがいる。正直言って聞くまではかなり嫌厭していた。角の立つ言い方に最初はなってしまうが、正直な所感を述べるのに迂回しなければいけない通り道であるから、少々我慢して聞いてほしい。
嫌厭の原因は気取りすぎているように感じるような曲のタイトルやアルバムのタイトルだった。
『だから僕は音楽をやめた』
若干の自意識とナルシズムを含んだアルバムのタイトルだから、僕の好みではないだろう、と2,3年前は思っていたし、試しに聞いてみたが格調の高さと洒落た感じが自分とは合わないなと感じていた記憶がある。あの頃は(泥水をすすって受験勉強をしていた頃)プログレとかもっと激しくて、暴力的なサウンドを好んでいた。
それがなんの変化なのか、気づいたらヨルシカばかり聞いている自分がいる。人の好みは移り変わりのあるものだという定説というか常識があるが、確かにそうだ。
なぜなのだろう。
知らない人のために紹介すると、ヨルシカというアーティストはボーカルのsuisと、作曲と作詞を担当するn-bunaからなる。suisの歌声。それは時に十代の多感な少女のようであり、時に成人した女性瑞々しい若さであり、時に傷付きやすい少年のようでもある。そしてn-bunaのサウンド。それは童話のような可愛らしさを持った物語であったり、季節の変わり目に対する敏感なまなざしであったり、暴力的なまでの抒情性であったりする。
うまくまとまらないずこんな下手くそな形容だが、兎に角僕はこのアーティストに猛烈にいま惹かれている。それがなぜなのかは、なかなか言葉にできそうにない。ぱくぱくと口を開きながらも言葉が出てこない、そんなじれったさがある。もしかすれば世界に対する優しさ、柔らかさ。そこに魅力を感じているのかもしれない。だがとてもそれでは魅力を言い尽くせたとは言えない。
世界観の構築能力で言ったら、凛として時雨と並ぶものがある。いずれ凛として時雨も述べたいところだがそれはまた次の機会に譲るとする。