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clemandhiro
奇妙な会社「身長」
その会社は遠いところにあったのですが、いまでは遠くはありません。でもそのころの私は 遠距離通勤に憧れて、遠い町まで面接を受けに行ったのです。面接室は、寒くて広い部屋、背の低い男の人が面接官でした。
「わが社はでんとうてきに、身長百五十・1センチ以上ある人は採用しないのです」
平仮名と中黒と漢数字とアラビア数字の混同した答えが帰ってきて、私はとっさに答えていました。
「私の身長は、百四十九てん七です」
「いえいえ、あなたはたしかに百五十てん二せんちあります」
「どうして言い切れるのですか、見ただけなのに」
そこまで言うのなら、と言って面接官は立ち上がりました。実際に、測ってみましょうと面接室を出て歩く。長い廊下の突き当りにあったのはセンチの刻まれた柱。
「さあ、ここに寄りかかって」
促され冷たい柱に背を添わせると、なんだか奇妙な感覚がありました。浮いているようなそれでいて自分が煮詰まったような。
「おや、ほんとうですね。驚いたことに、百四十八センチです」
「そんなはずは」
小さくなっていました。
「合格デス」
と、係官はカタカナ混じりで答えたのです。家に帰った私はさっそく引っ越しをして、会社の隣の小さなビルの三階に住んでいます。今では身長が何センチかわかりません。
奇妙な会社 つづくけど話はつづいてません。