監視資本主義社会の到来で、自律的人間が終わる
ズボフの『監視資本主義』について、前回は、グーグルがわたしたちから膨大なデータを収集していて、プライバシーを侵害しているといった問題を中心に取り上げましたが、今回は、そのデータをもとに、わたしたち自身が操作されている可能性について主に取り上げていきます。
操作のために駆使される心理学的手法
クリック率の高い効果的な広告提案をするには、情報の量だけでなく、多様さも求められるようになり、スマホやパソコンなどの情報端末にとどまらず、調理家電やお掃除ロボットなど電化製品全般に、グーグルなどの手がのびていることが前回の投稿の内容でした。
そのうえで、グーグルなどが推し進めているのが、わたしたちの行動を自分たちが意図したように操作していくことであり、次のようにあります。
この行動修正という、わたしたちの行動を操作するために、いろいろな心理学的手法が用いられているわけですが、そのイメージがわきそうな部分を取り上げます。
どういう人間かの判断を、書いた内容ではなく、本人すらたぶん気づいていない無意識的なところでとらえようとしていて、本当に気持ち悪いと思います。そしてわたしたちをさらに深く知ろうとする試みは、顔動作記述システム(FACS)などでさらに進化しているようです。
他者の道具としてのわたしたち
生体センサーや深層センサーを搭載し、気づかれないほど小さなカメラを使って、わたしたちの細かな表情までとらえようとする試みが進んでいるようです。こうやってえた情報をもとに、顧客を類型化して、どのような販売を望んでいるかを推測し、心に響くメッセージを練って、届けることで、人々の行動を変えるといった操作が行われています。それはクリック率であり、最終的には成約率が少し上がるだけで、収益を劇的に増やすことができるからです。ですから「監視資本主義の目的は、わたしたちを破壊することではなく、わたしたちの著者となり、その著作から利益を得ることだ」と書かれています。
わたしたちはそうやって利用されており、そういった状態を本書では道具主義(instrumentarianism)と呼んでいます。
このような道具化にいたる心理学の源流に、「徹底的行動主義」があると著者は指摘します。その先駆者に、一切の主観を排除して、行動の観察に専念すべきだと主張したスキナーがいます。自由と無知は同義語だと書いたそうで、人間に本来自由などないと考えていたようです。
自律的人間の廃止
このスキナーを完成させたのが、MITメディアラボ内のヒューマンダイナミクス・ラボのディレクター、アレックス・ペントランドだと本書では位置づけます。
そういったシステムをつくろうとしているのがグーグルのようで、グーグルの共同創業者であるペイジは次のように言ったとあります。
あらゆる情報を集めて正しい判断をしてくれるような印象を、あたかも与える発言ですが、実際には、どのような方向に導くかを決めているのは、AIではなく、グーグルの上層部のようで、法学者フランク・パスクワーレが次のように述べています。
グーグルの上層部がわたしたちを導く方向を決めていると書きましたが、より広い視点にたつと、国際金融資本であり、その背後にいる一握りのエリート層が決めているのですね。グーグルは彼らの先兵としてわたしたちの生活に深く入り込んでいて、人々がほとんど警戒することなく、存在してしまっていることが私は問題だと思っています。
グローバリズムの問題として、戦争や感染症対策の注射は犠牲者も多く、見ることができることで注目が集まりますが、グーグルによる操作という見えない脅威も同じくらい大きくて、そこに気づいてもらいたいのですね。なぜならズボフも警告しているように、知らなううちに廃止されようとしているのが、自律的人間だからです。
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