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佐藤達夫の『日本国憲法誕生記』      生みの苦しみをさわやかに語る

 西修さんの著作のなかによくでてきた佐藤達夫さん。終戦直後、内務省法制局部長だった佐藤さんが、ご自身の役割を含め、当時の憲法成立過程を綴っているのが本書。
 家族思いのお父さんが、アメリカの総司令部や日本側の関係者の間で奮闘し、一字一句に気を配りつつ憲法をつくりあげる過程に携わられた。国会での審議が始まるまでの徹夜続きの作業、国会での議論への対応などなど、さらには、アメリカだけでなく、戦争にかかわった国々の代表を含め、いろいろな思惑が絡み合って憲法ができてきたことを垣間見ることができ、それが次のような佐藤さんの言葉に集約されていったのでしょう。
 

「この仕事にとりかかって、つくづく感じたのは、およそ一国の憲法成立の過程として、これほど複雑なものはないであろうということであった。それは、総司令部との関係ばかりではなく、その背後にはアメリカ本国政府の政策があり、さらにその周辺には、連合国相互のあいだの微妙な関係がからみあっている。しかも、それらの事情は、戦争終結のだいぶん前から生じている。そのほか、ポツダム宣言の法的意味、あるいは、日本の降伏の性格の検討など、これらを外にして、日本国憲法の成立過程を的確に把握することは不可能であるといってもよいであろう。」

佐藤達夫著『日本国憲法成立史 第一巻』まえがき

  本書の解説のなかに含められた佐藤さんの別の著作にある感想ですが、憲法のことをさらに深く学ぶ段になったら、この本も読んでいきたいと思いました。
 本書は憲法にこめられた思いを引き継ぐためにも、憲法について語りたい人に必ず読んでいただきたい一冊です。

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