セカンドキスはたばこの香り


♪真っ赤な薔薇は  あいつの唇

昭和から平成に変わるころ、大学生になった私はすぐに独り暮らしを始めた。生活費は全て自己負担だったので、パチンコ屋さんでバイトをした。ホールのバイトは、一般的な学生アルバイトより100~200円くらい時給が高くありがたい気持ちで一杯だった。しかしその分、お客さんのクレームやパチンコ台備え付け灰皿の定期清掃など、きつい面も当然あった。

大学生で迎えた夏休み。頭の中は遊ぶ事で一杯だった。大学1年の時、初めてできた彼女に人生のファーストキスを捧げた。天にも昇る喜びの時間はあっという間で、その後1ヶ月で振られ、元気を失くしていた私は、バイト仲間と海へ出かける約束に期待をしていた。何に期待をしていたかといえば、もちろんもちろんナンパである。
とはいえ、これまでの中高校生時代、緊張して女子と話せない男が、一人暮らしを始めたからといって、急にあか抜けるわけでもなく、結局は一人も女子に声をかけずじまいで終わってしまった。色白の私が、1日海で過ごしたため深く日焼けしてしまった。水浴びをした後、真っ赤になった背中からは湯気が出ているのではないかと思わせる熱さで、しばらくはうつ伏せで寝る事となった…

ところが、バイト先で好意を寄せているカウンターの女の子にその事を話すと。女の子は日焼けあるあるだと言って笑ってくれ、急に親しい関係に発展。まさに「チャンスはピンチの顔をしてやってくる」といったところだろうか。神様ありがとう。しばらくして、その女の子をデートに誘いOKをもらった。

このチャンス絶対に活かしたい!!

そこで恋愛初心者の私は、恋愛指南書を熟読した。当時はネットなどなく、情報元は人伝か本、エロ・スポーツ系新聞のみ。本だとデラべっぴん、PLAYBOY🐰あたりはメジャー級で、日米の可愛らしいグラビア写真に下半身も大分お世話になっていた。

さて指南書には、『デートでキスができる方法』とあった。そんな方法があるのかと、藁にもすがる思いで読んでみると、おおよそ次のような内容だった。

【キス指南】
まず、人気のない公園のベンチに二人で腰をおろします。次に会話の中で、マッチ棒がまつ毛に乗ると思うかと問いかけ、マッチを取り出し、目をつぶってもらいます。そこですかさずキス…
というものだった。

当時、脳の半分が精子でできていた私は、これはすごいアイディアだと思い、早速マッチとタバコを購入。タバコは吸ったことがないので、吸えるように練習。

実際にやってみたが、「まつ毛にのるかやってみようよ」の部分でものすごい嫌悪感たっぷりの目で見返され、あえなく撃沈。
キスまではたどり着けずどころか、普通にふられてチーン。

残ったのは、喫煙者の仲間入りという実績のみ。だが、私は負けなかった。振られた瞬間は、更なる自分磨きに励もうと決意した瞬間でもあり、この数日後、私は包茎手術の診療台で下半身を出していた。当時の包茎手術についての様子については、ぜひ「♪余分な皮はさよなら ね 包茎手術♪」(2話目)を読んでほしい。

ご拝読、ありがとうございました👋


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