短編小説「麻子とアキ 第一話 トラブルメーカー」(1)
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勝手な言い草なんだ。もし、彼女の口にした言葉を一言一句書き留めて、それを箇条書きにして相手に見せたらきっと裁判沙汰になるだろう。けれど、彼女がその薄い唇を震わせて雨に濡れた小犬みたいな声を搾り出してそれを言うと、それがまかり通る。道理が引っ込んで無理が通るんだ。麻子(あさこ)はひどい嘘つきだから。
最近は大人しかった。今朝、出社前に見た彼女はぼくがローンで買ったソファに足を投げ出して、ソファからはみ出した爪先でスリッパをブラブラさせていた。口に体温計を咥えて、基礎体