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ホーミー チムニーは目を覚ますと、まずさいしょに葦の茎でできたカーテンを目いっぱいに開…
飛びミミズ 腕に小さな水ぶくれができた。ちょうど肘の少し上のあたり、シャツの裾で隠れる…
電話病 電話の鳴った音がした。 俺はそのときようやくやってきた眠気にうつらうつらし始…
外に出ようとする男と女 今日の分の支払伝票をファイルして、ロッカーにそれをしまいに行く…
あのころ 夏休みが明けてすぐ、通学路を歩くトッコの足取りは重かった。 黒く日焼けした…
横浜元町エレクトリカル・パレード アイカは自分の名前が嫌いだった。愛する花。なんて恥ず…
声 「なあ、聞いてるのかよ」 あんまり反応が鈍いものだから、おれは生卵を握りつぶすくらいの力で麻子(あさこ)の肩を掴んで、そう言った。夕食の後、今までずっとおれと会話していたのに、麻子は驚いた顔をして体を固める。警戒の仕草。眉間をしかめる。 「聞いてるなら何か言えよ。おればっか話してて、バカみたいだ」 麻子はしかめっ面のまままばたきを一つ、おれの顔を不審そうに見る。そのあと急に取り繕うように頬を緩める。「ごめん。聞いてなかった。何、何の話」 おれは舌打ちをして麻子から