犬
地元に住む母からLINEがあった。
「秋冬に着るいい長袖、買っておいたよ」
前にとりあえずすぐ着られる長袖があると便利だなと言っていたから、服屋で気にして見てくれていたのだろう。母の優しさに感謝しながら、画像付きのメッセージを開いた。
![](https://assets.st-note.com/img/1731404681-c7SYkE1tefOp2LXiRq0uNCUQ.jpg?width=1200)
新品の長袖の左胸には野犬がいた。
これは一体どういうことだろうか。母は普通の服屋さんでこれを購入したのに。目は白目を剥き、何か言いたげに口を開いている。おそらく威嚇だ。その鋭い瞳からは過去に人間に酷いことをされ、もう野犬仲間と自然しか信じられなくなった怒り、そして悲しみを感じる。また左耳を拡大すると、耳毛がフサっと生えている様子。大きなお世話だが今すぐお風呂に入れてブラッシングしてあげたくなった。
きっとこの野犬はグループの長だったのだろう。人間の勝手で野に放されて、彷徨っていたところ旧長に認められ、今では立派な群れのリーダー。こんな眼光鋭い感じだけど、群れで生まれた子犬達やヤンチャな若衆には厳しさの中にも優しさのこもった眼差しを向けているのだろう。
しばし野犬のビジュアルに呆然としつつ、ふとその下の文字に目がいった。
"Helusiba"
ますます謎は深まった。
最初は"Hell shiba"="地獄の柴犬"だと勝手に脳が処理していたが、よく見ると地獄でもなければ柴でもなかった。しかもこれはなんと読むのが正解なのだろうか。今の所"ヘルスィバ"が1番素直な読み方だ。
それか別に正解があるわけではないのかもしれない。私が勝手にこの見た目で色々なことを考えすぎて、ロゴに意味を持たせすぎてしまっているのかも。なんだかもはやヘルスィバでもヘルシバでもどちらでも良くなってきた。
何かの縁でうちに来てくれたのだ。この子の心が少しでも豊かになるように必ず洗濯ネットに入れて洗うことをここに誓う。