父性
8月の中旬に父を亡くしたのだが、日に日に寂しくなるのはなぜだろう。
わたしは男のプライドをズタボロにする。
父から理不尽なことで殴られたことが先なのか、わたしの男のプライドを傷つけてしまう勝気な性格が先なのか、あるいは両方なのか他の原因があるのかわからないが、とにかく悪いことは一度もしていないのに、態度と目つきの悪さでよく父から殴られたものだ。
普段は無口で温厚な父なのに、いったん怒らせると手がつけられない。母を殴ったことはゼロではないが、数回しかない。でも、わたしや弟はけっこう体罰を喰らった。
そのようなとき以外はとても温厚で無口で優しい人であった。酔ったときは何回もわたしと弟の自慢をしていた。(親戚のみなさんはウンザリしていたのだろうが、それでも父は周りの人から愛されていたと思う。)
親想いで、子煩悩で、やさしくて、ハンサムで身長は180センチの自慢の父であった。
そして夕飯どきには必ず帰ってきていたし、休日にはよくどこかに連れて行ってくれた。
1番の思い出はレジャーや旅行ではなく、近所の公園に連れて行ってくれたことだ。
実家から近くに住んでいるので、いまでもその公園には毎日行く。そこで、ふと幼い頃の公園での記憶が蘇る。そしてその度に泣きじゃくりそうになるのを必死で堪える毎日である。
父の父性。
幼い頃から態度と目つきの悪さで殴られていたので、思春期から20代前半までは大嫌いであった。
だが、23才のときに留学に行ったときは滞在先で常に父のことばかり考えていたし、父が要介護になってからはいそいそと介護に励んだ。自分がこんなにファザコンであったとは思いもよらなかった。
わたしだけでなく、母からも介護ヘルパーさんや訪問看護師さんにもとても愛されていた。
過去に理不尽に殴られたときは正直、
「このクソジジイ、だれがお前の介護なんてするか」と思ったものだ。
なぜか要介護になってからの父のほうが好きだったが、生まれたときからずっと父が大好きだったのだろう。
まだ四十九日経っていないので、すぐそばにいるような気がする。寄り添って見守ってくれているような気もする。
守ってくれている。
父の父性を強く感じる。