セガサミーフェニックスの話は今後のプロ雀士の在り方を考えさせる問題
先日、セガサミーフェニックスが魚谷侑未プロと東城りおプロと来期の契約を結ばない、ということになり今期で退団ということになりました。
色々な憶測が飛び交っておりますが、セガが開発している麻雀ゲームアプリ「MJ」の存在が大きく影響しているのではないか、と言われているのが本命視されています。
だとしたらそもそもなんでMJで使えない日本プロ麻雀連盟(以下連盟)の選手をドラフトで取ったの?って話になるはずです。
最初から最高位戦日本プロ麻雀協会(以下最高位戦)、もしくは日本プロ麻雀協会(以下協会)、RMU、麻将連合から取ったほうが話が早かったんじゃないの?って思う人がいて当然です。
んで、そもそもなんでこんな麻雀プロ団体がいっぱいあるんだ?っていうのもひっかかるところです。
このあたりを見ると今回の問題が少しずつ見えてくるし、今後プロ雀士になろう、って人も求められる能力は単純な「麻雀の強さ」ではない、ってことになってきます。
そもそも「プロ雀士」ってなんだ?
本来「プロ」ってつくとその競技で稼いでいるプロフェッショナル、ってイメージがどうしても強いですよね?
実際スポーツで「プロ」と呼ばれる人たちは個人や企業がチームを持っていてそのチームに契約、所属しチームから給料を得る、というのが普通です。
では、頭脳ゲームである将棋のプロ、「プロ棋士」はどうか?
こちらは過酷な試験である「奨励会」というところで勝ちぬけた人が「日本将棋連盟」に所属しタイトル戦を戦って盛り上げるのはもちろん、将棋の普及にも全力を尽くす、ということになっており給料は「日本将棋連盟」からもらっています。
そしてそのお金は棋戦を主催しているスポンサーが「日本将棋連盟」にお金を払って広告として盛り上げてもらっている、というのが一般的です。
昔は新聞社がほぼ独占していましたが最近では紙の新聞の売り上げが落ちたことにより、色々な会社がスポンサーとなってタイトル戦を開いていたりします。
そしてこのスポンサー獲得を必死にやっていたのが「日本将棋連盟」でその成功が今現在将棋界が盛り上がっている一つの要素になっているのは間違いありません。
では最近出てきた「eスポーツ」のプロってのはどうなのか?
こちらも個人や企業がチームを持ち、そこに選手が契約、所属しチームから給料を得るっていう他のプロスポーツとほぼ変わりません。
しかしながらゲームソフトは何年間も同じまま、ってことはありえないのでプロとしてやっていける期間は短いのではないか、と言われておりセカンドキャリアを早めに見つけるプロも多く現れています。
ある意味サッカー選手よりも選手寿命が短いのでは?と言われていますが「格闘ゲーム」だけはどうやら別格で比較的寿命が長め。
しかしやはりゲームプロとしてだけで食べていくのは難しいと感じている方も多く、ほとんどの方が配信業でつないでいる、ってのが現在の状況です。
さて、前振りがかなり長くなりましたが「麻雀プロ」「プロ雀士」ってどうなんだ?ってところです。
色々な団体がありますが全てにおいて「麻雀プロ」はライセンスであり運転免許証のようなもの、ということです。
団体に認められてプロになってもそこから給料がもらえる仕組みではありません。
むしろライセンス料として年間の支払いが発生します。
これが麻雀プロになっても続かないで辞めてしまう人がいるのと、アマチュアでめちゃくちゃ強いのにプロになりたがらないというのを生んでしまっています。
そしてタイトル戦などの大会に勝ったとしても日本の法律の問題で優勝賞金は200万円まで、となっているため1回の大会を優勝しただけでは生活が成り立ちません。
なのでサラリーマンとの兼業プロや雀荘の運営に携わっているプロ、ゲスト活動を積極的に行う営業系のプロなど色々なタイプが存在します。
その中で麻雀を強くなるために勉強して、ってなると時間が明確に足りません。
もちろん効率的にやっている方も存在しますが、それが出来るのはほんの一握り。
つまり、麻雀プロのほとんどが「麻雀で戦う」=「給料を得られる」という構図が存在していないのです。
「Mリーグ」の始まり、そして入れ替え地獄
それを打開すべく現れたのがこの「Mリーグ」でした。
企業がチームを作り、そこに選手が所属、選手の給料をチームが支払う。
正しくここが「プロスポーツ化」のスタートでした。
しかしそこには色々と盛り上げる要素もたくさん作らないとならない。
そこで考えたのが「エンタメ化」というところ。
男女混合チームの義務化、実況解説の新たなアプローチ、勝利者インタビュー、注目選手インタビューなどなどとにかくありとあらゆるところからエンタメとして盛り上げよう!ということで色々なことが盛り込まれます。
しかし、3年目から「プロなんだから実績が出ないとさすがにまずいよね」ということで2年連続ファイナルにいけなかったチームが強制的にメンバー入れ替えというルールが追加されます。(現在はセミファイナルに行けなかったチーム、に変更されています)
さらには強くエンタメ化する一方で個人のトラブルなども影響し、選手の入れ替えが行われることとなりました。
現在はKONAMI麻雀格闘俱楽部に所属している滝沢和典プロも元々はEX風林火山に所属していたのですが本人は「武者修行」での退団を示しましたがチーム内でのトラブルがあり、チームに残りにくいからの退団と思われました。
現在解説をされている藤崎智プロも契約を結ばれなかったから退団、とこちらも厳しめ。
辛口解説が嫌いな方からはアンチコメントまで飛び出している現状。
体調不良を理由にサクラナイツを抜けられた沢崎誠さんも本人的にはもっとやりたかったのでしょう、しかし企業側から見ればリスクが伴うので契約更改しなかったのもやむなしとも言えます。
で、ここからレギュレーションに引っかかってしまった二つのチームのお話。
一つが今期優勝したU-NEXTパイレーツ。
レギュレーションに引っかかってしまう最後の試合を石橋伸洋プロは必死に戦い悔し涙も見せました。
レギュラーシーズンで成績が振るわなかったのもあって真っ先にクビを言い渡されるのは覚悟していたのでしょう。
しかしチームは一人に責任を押し付けるような契約更改では印象が悪いと見たのか朝倉康心プロにもクビを宣告。
結果二人を入れ替えることとなり、このことがチームにいい影響を与えたのか、今シーズン優勝となりました。
もう一つは赤坂ドリブンズ。
2年連続ファイナル落ちの1シーズン目は村上淳プロが絶不調。
とにかく何をやってもうまくいかない状況が続いてしまってラスを量産。
ただ、麻雀をやったことがある人ならばこのような不運が続くことなって予想が出来るはず、本人の選択が悪すぎた、なんてことは言えないものです。
そして2シーズン目も村上プロの不調は回復せずトップがとにかく取れない。
当然レギュレーションに引っかかったときには真っ先に村上プロがクビを言い渡されるのは当然、との見解でした。
しかし、こちらも一人に全責任を押し付けるのはどうか、と丸山奏子プロにもクビを宣告します。
そして生まれ変わったチームは新しい要素を色々入れての2位という結果。
ってことはチームメンバーを変えることもそこまで悪くない選択肢なのか?と思わせてしまいます。
BEAST JAPANEXTが明らかにしてしまった連盟の「麻雀プロタレント」不足
昨年、9チーム目としてBEAST JAPANEXTがMリーグに新規参入しました。
当然ドラフトでチームを作るわけですが、チームの一人をオーディションで大会をやってその優勝者にしよう、という企画が行われます。
このときに男性女性8人の有名プロがオーディションに出るわけですが・・・
逆を言えば「オーディションに出る」=「ドラフトでは選ばない」とうことであり、すでにドラフトで指名する3名は決定していた、ということがわかります。
実際ドラフトの結果は大方の予想通り。
しかし、プロ団体の垣根を越えてチームを作る、ということはせずにあえて連盟の選手を取るということをしてしまったことで、連盟にはこれ以上麻雀界に影響力、発信力を出せる人はいませんよ、ってことを露呈してしまいました。
それが故の4人目はオーディションだった、と。
そうすれば「連盟さんに完全に忖度するチームではない」ってことを一応主張出来るのですが、出来てしまったチームを見ると・・・
結局のところチームを作るには団体の垣根を越えて作るのが難しい
なぜそうなっているのか?という大きな問題はそれぞれの団体の上層部の問題。
なぜかこの件に関しては連盟が基本的にリードを握っています。
放送対局を盛り上げてきたのも連盟がやってきたからだ、というものが大きいのかもしれません。
それゆえにMリーグのチームを作るとき、連盟オンリーのチームで行くか、連盟外しのチームで行くか、混合で行くか、という問題が大きかったのかもしれません。
なぜなら連盟の有名選手はアーケードゲーム「KONAMI麻雀格闘俱楽部」のゲームと仕事として契約しており、自団体制作のネット麻雀ロンロン(最初はオリジナリティーを出していたが近年になって完全に天鳳とUIが一緒になってきた)の二つしか基本打ってはならない、という制約が出来てしまったのです。
そしてコロナ禍になり、ゲーセンに行く人口が低下して、麻雀格闘俱楽部が下火となるとファンと一緒に打つ機会を増やすにはオフラインしかない、つまりファンと打つ機会が圧倒的に減ってしまった、という問題が発生しました。
そしてネット麻雀は今は天鳳と雀魂の2強。
この二つはとにかく広告宣伝がうまくいった、というのが大きいところ。
天鳳は連盟以外の有名プロが多数参戦して大会を行ったところ、雀魂はVtuberを利用してとにかく新規ユーザー開拓に大きく舵を振ったところが成功した、と言われています。
で、名の売れた連盟の選手はこの二つのネット麻雀に参戦が出来ない。
名前が売れてない選手、格闘倶楽部と契約してない選手が参戦して新しい風を送り込んでくれるか、という可能性は出したのですが、結局後が続かない。
これがMリーグのチーム宣伝でも同じことが起こります。
連盟主体で動かしたチームはネット麻雀でのファン交流がしにくい。
Youtubeで自前のチャンネルでなんとかするしかない、ってなってますがどうしても先行投資組に早く動かされてしまう、という問題が付きまとう。
EX風林火山、雷電、KONAMI、BEAST、フェニックスはこの問題をどうするのか?というのが常に言われておりました。
そして問題のフェニックスのチーム作りの話になります。
セガサミーフェニックスを作る
このことにあたって、大きく影響したのがMリーグのエンタメ化。
最初からエンタメ化するならファンが喜びそうな面白いチームがいいでしょう?というのがフェニックスの戦略に見られました。
それが魚谷プロのドラフト1位指名。
セガのゲーム「MJ」があるにも関わらず連盟の選手を選びました。
2位に近藤誠一プロ、3位に茅森早香プロという1年目の布陣。
なるほど、ファン受けをよくするための戦略ですか、という感じ。
それが2年目の追加ドラフトでも出てきます。
その指名が和久津晶プロ。女性プロの中では連盟の最高峰リーグ鳳凰位戦においてA1リーガーだったのもあり実力は折り紙付き。
しかしながらMリーグではなかなか結果が出ずに2年で退団。
後任に東城プロが入るわけですが実力から見たらどうしてその指名になった?という疑問に残る指名でした。
女性を多く投入することでチームのファンを増やそう、っていう作戦ですか、ってのはわかるのですがチーム戦になったら大丈夫?という不安はありました。
結果、昨シーズンは最下位で近藤プロが体調不良を理由にMリーグを辞めたい、となったのですがフェニックスとしてはファンを減らさないためにも「監督」というポジションで残ってほしいという方法を取ります。
実際Mリーグの監督のポジションはかなり激務なようでオーダーのような実際に試合に関わる業務以外にもチームのPRなどの業務など本当に多種多彩な業務がありながら自社の業務もやるようなのでかなり忙しいとのこと。
ですがそれを近藤プロにやるのは体調不良を訴えている相手にやる話では無い、基本チームのことは企業に任せておいてフェニックスの顔として「監督」というポジションで残しておこう、という形になりました。
そして醍醐大プロと新たに契約して今期4人で臨んだのですが結果最下位。
メンバー入れ替えをしたためレギュレーションにはひっかからなかったのですが・・・
全てはタイミングが悪すぎた
そこで最初の話、魚谷プロと東城プロの契約を更新しない、という話になったのです。
そこに最高位戦が「MJ」を本格スポンサードする、というニュースが飛び込んできたので単純に連盟だから二人を切ったのか、という風に見られがちですが・・・
ここにはセガサミーの会社としての問題も大きく関わっているのではないか、と今話題が上がっております。
というのもこのMリーグが出来た当時ならばチームを作ろうとした監督の方針はファンに受ける面白いチームを、だったのでしょうが年月が経ってセガサミーの経営自体も怪しくなってきており・・・
というのもセガはゲーム事業でここ数年かなり苦しんでおり、サミーのほうも今まで順調だったパチンコパチスロ産業がかなり苦しくなってきている、というのが大きく影響しています。
スマスロ北斗の拳こそ当たりましたがそもそものパチスロ人口も減っており・・・
それでいてここ最近出したスマスロはどうにも評判が悪い。
そんなこんなもあってかセガサミーの経営戦略を練り直そう、というのが出ています。
そしてその煽りを受けたのがセガサミーフェニックスと麻雀アプリ「MJ」の問題。
フェニックスとMJで押せばもうちょっとMJ人気出るんじゃない?って感じなのでしょう。
となればMJに使えない連盟二人は入れ替えたいよね、が大人の本音になるのではないのかな、と。
タイミングが今じゃなければ二人の退団も無かったでしょう。
本当にタイミングが悪すぎた、としか言いようがありません。
そしてもう一つの問題、MJはそれをすることで成功するか?というお話。
おそらくここからどういうプロモーションをするか、になりそうです。
ある程度システムは出来上がっている、それを完全にMリーグのルールと合わせることでさらなるファン獲得を狙うのか、それとも既存のままでいくのか。
コラボなどのイベントは打っていますがどうしても雀魂と比較されており、こちらのほうは後手後手。
Vtuberを絡めるにしてもさすがに今からでは遅いでしょう。
となればどういう戦術を打つのか?
せめて基本プレイ無料くらいまでなればガチャなどにも回してくれるお金がユーザー側も出来そうですが・・・
いずれにせよ今後Mリーガーになる、というのは麻雀の実力以外にも色々とアピールできる要素がある人じゃないと務まらない、というのが見えてきました。
ファンとの交流だけでなく新しいファン層の開拓、そのあたりもチームではなく選手に求められる時代なのかなと。
となればその前段階の麻雀プロはもっと大変です。
知名度を上げる作業、麻雀の実力を見せつける作業、影響力があるところを見せつける作業など色々なことをやらなければなりません。
小学生が麻雀を覚えるようになってきた時代、Mリーガーになる、というのが一つのゴールになるように、そしてそれは決して不可能なことではないんだ、というのを誰がやってくれるのか、期待しながら今回の締めとさせていただきます。
ここまで付き合っていただいた方、本当にありがとうございました。