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中村文則『銃』

あらまあ、そりゃいかんいかん、大変なこって、なんでも拾ってしまうその癖、はよ直しはったらええんとちゃいます?
っていう声が聞こえてきそうなイメージ。
この小説を読んだ人からは賛同を得られないと思うけど、そういうイメージ。

いつ何が起こるのか

電車の中で、隣に座っている人がどんな人なのかなんて、わからない。
どうもこんにちは、突然ですがお名前を教えてもらえますか?あと年齢と、職業と、既婚か未婚か、お子さんがいるかどうかもついでにお願いします。
そう話しかければもしかしたら、隣の人がどんな人なのか、わかるかもしれない。

隣の人の鞄の中に、危険物が入ってないだなんて、言い切れるだろうか。
もしかしたら刃物を隠し持っているかもしれない。
もしかしたらスタンガンを隠し持っているかもしれない。
もしかしたら火炎放射器を隠し持っているかもしれない。
僕たちは常に、危険と隣り合わせの世界で生きている。

日本は平和だと言う人がいる。
確かに平和だと思う。
夜中に女性がひとりで出歩こうと思える国。
僕は日本が好きだ。

オーストラリアに1年間、ワーキングホリデーをしに行っていたことがある。
オーストラリアといってもケアンズという、まあまあな田舎町だ。
そこで、旅をするのではなく、暮らしたいと思い、1年間、ずっとケアンズに住んでいた。

いろんな遊びを経験した。
ナイトクラブで踊り明かしたのも、カジノで負けまくったのも、ちょっといいホテルで夜景を楽しんだのも、ケアンズが初だった。

オーストラリアは人種のるつぼと呼ばれているが、ほんとうに多種多様な人がいた。
アジア人も、欧米人も、アボリジニも。
さまざまな言語が飛び交いつつ、いろんな国の食事が提供され、泣いたり笑ったりしていた。

怖いなって感じたことは、まあまあある。
例えば夜中、夜風に吹かれながら散歩をしていたらずっと「Fu◯k Fu◯k」と言いながらランニングをしていた筋肉隆々な男性を目撃したときとか、オーストラリア建国記念日にオーストラリアの国旗を折って歩いていたアボリジニに遭遇したときとか。

僕が恐怖を感じるよりも先に、一緒にいたオーストラリア人の友人が反応していたので、これは危険なことなのだと察知することができた。
そういう、身の危険を感じる能力は、彼らの方が高い気がする。

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