見出し画像

有川浩『空の中』

SFなのか?と思って読み進めたけど、最後はいい話だなあってしみじみした。
空を巡る話のようで、人と人を繋ぐ話のようで、サスペンスのようで、恋愛のようで、あったかくなる話だった。

海の底と空の中

有川浩は『阪急電車』で有名だ。
映画化もされているから知っている人は多いと思う。
まだ観たことがない人は一度映画を観てほしい。
きゅっと心に沁みて感動する。

阪急電車は読んだことあったけど、他のものは読んだことがないのが有川浩だった。
図書館戦争とか、有名な小説は他にもたくさんあるけど、なんでかわからないけど、わざわざ手に取って読もうと思わなかった。

夜のBOOKOFFで古本を買い漁っていたとき、レジの店員さんとちょっと雑談になった。
たぶん僕が大量に本を買っていたからだと思う。

レジの店員さんに、「お勧めの本ってありますか?」と聞くと、彼は少し迷いながら
「有川浩の小説が好きです」
と答えてくれた。

「一番読んでほしいのは『図書館戦争』なんですけど、シリーズものでかなり多いので、その他だと『海の底』がお勧めです」

そう言われたので、有川浩の『海の底』を読んだ。
すっごく面白かったのをまだ覚えている。
人間ドラマかこれは、と思わせてくれる内容で、いろいろな年代の抱える悩みや心の移ろいを書き切ってくれていた。

そんな印象を持っていたから、古本屋で『空の中』を見かけたとき、咄嗟に買わなきゃ読まなきゃと思い手を伸ばしていた。

人はそれぞれいろんなことを考えている。
何かを守るためには、誰かの敵にならなくてはならない。

愛が溢れる世の中だからこそ、愛を守るために戦う。
大切な人がいるからこそ、大切な人を信じるために戦う。
戦うということは、他者を傷つけるということだ。
そうして、人は争っていく。
みんな、誰かの大切な人なのに。

立場によって、人は異なる考え方を持つ。
同じ敵に対しても、違う視点から相手を見定める。

有川浩の小説に登場する人物たちは、そういうさまざまな視点でさまざまな見方をしていることがよくわかる。
子どもの視点、青年の視点、老人の視点、それだけでも捉え方が違うのだと改めて教えてくれる。

この本のあとがきを読んで初めて知ったけど、有川浩って電撃文庫の出身なんだね。
この『空の中』が二作目らしいけど、これを出版した当時の編集者、すごいな。

本ってたくさんの人が関わってようやく一冊が出版される。
いろんな想いを込めて、世の中に出てくる。
その想いが、すぐに伝わることもあれば、何年、何十年とかけて浸透していくこともある。

初版から約20年かけて僕のところに辿り着いた小説で、僕はほっこりすることができた。
これを出版させた方々、ありがとう。

いいなと思ったら応援しよう!