バキバキテカテカのオーダースーツで出社したらあだ名が「社長」になった話
僕は腕が長い。
どのくらい長いかと言うと、電車でつり革に掴まると腕が余って不安定になるから、その上の銀の棒をがっしり握っているくらい長い。
混雑していて掴まれない時は、中吊り広告をはさむための銀のアレに指を引っかけているくらい長い。
腕が長すぎるもんだから、ミドルプライスのスーツ屋の定型製品はほとんど体に合った試しがない。
今週のダンキャリは(#服装と働き方)がテーマということで、僕がオーダースーツを買ったときの話を書こうと思う。
服装は面積で言うと見た目の9割くらいを占める。
同じ人でも、ヨレヨレでブカブカの破れ放題な服を着ていればあまり近づきたくないし、ピシッとまとまって体に合った服を着ていれば、日本の服はだいたいオシャレなので、勝手にオシャレになる。
僕は意図してあまり地味な服は着ないようにしている。
なぜかというと、よく予備校の浪人生やコンビニのバイトと間違えられるくらい顔がとてつもなく地味なので、服装を地味にしてしまうと、地味×地味の特別コラボが完成して、透明マントでも着たかのように気配が消えてしまうからだ。
ジャングルでの迷彩服さながら、毎日何人も訪れる有象無象の中に、あっという間に埋もれてしまう。
"寝坊したけどどうしても朝ごはん食べたい、シャワーも浴びたい、思いきって遅刻だ!"みたいな日にはこっそり出社できていいかもしれないが、それ以外の日には基本的にマイナスだ。
とはいえ、スーツで派手にぶちかますのもTPOがどうのこうのであまりふさわしくないので、新入社員の時はとりあえずリクルートスーツよりやや青いくらいのスーツで出社していた。
段々と、柄や色よりもむしろ、体にフィットしてないことのほうが気になるようになり、いよいよオーダーを作ることにした。
オーダーとは言ってもイージーオーダーで、生地を選んで、ある程度決まった型を、体に合わせて修正するようなやつだ。
パターンオーダーよりちょっと高いくらいの、オーダー初心者がよく作るやつである。
初めて生地から選ぶことをしたので、全く感覚がわからず、「このくらいならいいかなー」という感じでけっこうパンチの効いた柄にした。
完成してみると、生地で見たときの500倍くらい派手にできあがり、内心これはまずいなあと思っていた。
でも、作ってしまったからにはあとに退けないので、とりあえずそれで出社した。
反応はすごかった。
もし辞書に『o0(こいつやらかしたなー)』という単語が載っているとするなら、きっとあのときの皆の表情が参考の絵に採用されると思う。
バキバキテカテカのシャリシャリスーツで颯爽と登場し、しばらくのあいだあだ名が社長になったのだった。
結局、そのスーツはもしもの時用にしまっておき、新しくやや落ち着いた柄のを買い直した。
なにが言いたいかというと、服装はほぼイコールで印象なので、仕事する上ではめちゃ大事だということ。
「自分がどう見られたいか」ということをスタート地点にして、印象をコントロールすることもできる。
働き方を選択する上でも、所属する会社の服装ポリシーは、その会社のスタンスにも深く関わるので、見ておくべきだろう。