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時をかける少女 という本を読みました。

私は「オススメだから読んで!」と言われると、なぜか意固地になり意地でも興味がないフリをしつつ、ふとした時に作品のことが気になり勧めてくれた親切な人々に「そういえばアレって面白いの?」と後々になって聞き返してしまう厄介な性格だ。(それでも根気強く勧めてくれる友人たちには感謝したい)その中の一作がこの『時をかける少女』通称時かけである。

前置きはさておき……。
仕事終わり、たまたま近くにいた友人と一緒にラーメンを食べに行ったときのことだった。駅前の百貨店で待ち合わせ、お目当てのラーメン屋へ向かう道中、商店街が寝静まる少し前の時間帯。友人がぽつりと呟いた。
「そういえば、今日は時かけと同じ日だね」
私は友人の顔を見て首を傾げる。
「え、そうなの?ごめん未履修だわ……」
「そうなんだ、きっと好きだと思うから見て欲しい」
内心ふーん、と思いながら携帯のマップへ目を戻す。気付けばラーメン屋を少し通り過ぎており、私の「あ、待って通り過ぎてる」という言葉を皮切りに時かけの話はそこで終わった。

その日から数日、職場の書籍を整理していると会社の相方(私は会社にソウルメイトの相方がいます。それはまた別記事で)が、青がよく映える背景に一人の女の子が高くジャンプしているイラストが表紙の資料集を手にしていた。
「時かけかぁ、丁度夏の話だし展示しよう」
出た、時かけだ。心の中で独りごちた。相方には無遠慮に何でも言ってしまう私は「ああ、なんかこないだ時かけの日だったらしいですね。友達が言ってました。面白いんですか?」と、用意していたセリフをわざとらしくぶっきらぼうに言う。
「うーん、hさんの場合原作をちゃんと読んでから映画を見た方が面白いと思えるかも」
…………ほほう。もっと聞かせてもらおうか。
そこから相方はネタバレに触れない程度にキーワードを教えてくれた。友人と相方の勧めも相まって、私はKindleの購入ページを開く。そしてまたポイントバックキャンペーンに喜びながら、購入ボタンをタップしたのだ。

(前置きがかなり長くなってしまったが、この経緯は私という人物を理解して頂くために必要なため、敢えて省略はしない。
また、本作は3編の作品が掲載されているため3作品分の感想をしたためます。)


※以下、ネタバレを含みます(とはいえ古い作品なのであまり配慮はしません)

1.時をかける少女

時代風景は80?90年代初頭だろうか。台詞回しや作中の雰囲気からそう感じた。(特に調べたりはしていないため、誤りがあればコメントよりご教示頂けると幸いです)
登場人物も少なく、場面転換も多いが割とテンポよく進み文体も非常に読みやすさを感じた。私は三人称が苦手だが、大体の商業小説はそうなのとプロが書くものは確かなのであまり気にはしていない。
シンプルなSF小説であると同時に、人間模様も描かれていてラスト2、3ページは思わず涙してしまった。(私は割とすぐ泣く)こうして恋を自覚することもあるんだなと思うと同時に、自覚しなければお互い辛い思いはしなかったのに、とも思ってしまう。私の悪い性格である。主人公の立場であっても、男の立場であっても、私なら辛い。なら、心の内を隠してしまった方が、知らない方がお互い楽じゃないだろうか。

奥華子のガーネットが沁みる。

いつか他の誰かを好きになったとしても
あなたはずっと特別で大切で
またこの季節がやってくる

こんな事を季節が巡るたび思い続けていたら、多分私は壊れてしまう。これが私の「一途」に思い続けられないところなんだろう。どうしても諦めきれない「執着」「依存」という部分。歌詞とあまりにも対照的で、自分の汚い心が浮き彫りにされているような気がした。
反面、物語はとても綺麗で美しいと感じた。
私もこうなれればいいのに。

2.悪夢の真相

途中まで前話の続きと思いながら読んでいたが、そんなことはなかったお話。思い込みや恐怖体験など、心理的なものから生まれる現象(?)について描かれていた。ファンタジー要素も含みつつ、実際に起こり得るであろう事柄であるため、少しばかり怖かった。

トラウマはきれいさっぱり忘れたいものだと思う。でも、自身に深く刻まれてしまったそれは身体中に根を張り、無意識に影響されている。私の対人関係がそうであるように、どんな形であれ自然と自分を守ってしまう。
昌子には文一がいてよかった。引っ張り上げてくれる友人がいてよかった。弟の芳夫も立ち向かえる勇気ができてよかった。

…………と、ここまで書いて飽きちゃった。
3つめのお話もインパクトは薄かったけど面白かったです。自分の思った通りになる世界。ちょっとだけコメディ感のある終わり方。くすりと笑ってKindleを閉じました。

自分の思い通りになる世界なんてつまんないなーと思う反面、楽ではあると思う。ただ、自分の性格的に向上心を求めてしまうので、乗り越えるべき道がなくなって、つまり目標がなくなって死にたくなると思う。
私の人生は小さな目標の積み重ねで成り立っている。夏は海を見て、花火を見て、お祭りに行って、かき氷を食べる。そんな小さな小さなことでさえ何もなしに叶ってしまう世界なら、いらないかも。

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