29.学校行事〜クリスマス会〜

 12月に入ると、学校中に甘〜い香りが漂ってくる。

甘い、美味しそうな匂い…
他の学校では、絶対しない、心地いい甘〜い香り。

なになになに⁉︎
いい匂い〜ッ……

「もうすぐクリスマスだね。」
仲良しのYちゃんが言った。

「お母さん達が来てね、クッキー焼いてるのよ。」
と教えてくれた。
12月になると、クリスマスのためのクッキーを、一階の調理場でお母さん達が毎日学校に来て焼いてくれる。
一階の奥で焼いているクッキーの甘い香りが、学校中に広がる。

「すっごく、すご〜く美味しいよ!!」
目を輝かせて、ゼスチャー大きく彼女は話す。

わたしも食べてみた〜い!!

この香りが “もうすぐクリスマスですよ” の合図。
讃美歌が流れ(どのタイミングで流れてきたのかは、ちょっと覚えていないけど…)、学校全体がクリスマス色に染まっていく。

素敵だ!!
素敵すぎる!!
こういうの、大好き♡

クリスマス会に向けて、音楽の授業も讃美歌の練習となり、6年生は劇の練習も加わる。

毎回、密かにワクワクしていたのは、私だけだろうか…

私はこの学園でのクリスマス会は3回出ることができた。
(お母さん達が焼いてくれたクッキーを3回食べることができた♡
星やツリーをかたどって焼いたクッキー。
優しい甘さで、硬すぎず、私好みのクッキーの味は、忘れられない。)

各学年で少し違うのは、5年生になると讃美歌をハモるように音楽のH先生がパートを振り分けていく。
今までは全員でソプラノのみで歌っていた。

私はアルト担当になった。
ピアノを習っているからと言われたけど……?
今でも学園で歌った讃美歌はアルトしか歌えない。

会の当日は、5年生と6年生がハモり、そこに可愛い声の1年生から4年生の声が入ってくる。
一生懸命歌う下級生の声が、何とも可愛らしかった。
この讃美歌をみんなで歌う瞬間が好き。

6年生になると、イエスさまが馬小屋で生まれるお話の劇をやる。

私たちが6年生になり、最後のクリスマス会となった。
配役が決まり、その中に出てくる3人の博士。
いつもとんでもなく、おふざけの多いWくんが、真面目な顔をして博士を演じていたのが、一番笑えた。

博士のつけるお髭を、仲良しのYちゃんのお母さんが作り、衣装の一部を私の母が縫っていたことを覚えている。
お髭は、長めの白い毛を薄い茶色に染め、鼻の下にすぐ付けられるように作られていた。

「こんなに立派な髭は初めて。
凄いね!!」
先生方も喜んでいた。

そんな家族も一体となって作り上げられた劇だが、ほんの一部しか思い出せず…
先生、ごめんなさい。
準備していた時のことや、練習、本番前のことまでしか思い出せません。

先生方が褒めちぎっていた立派な博士のお髭。
本番前になって
「髭がない〜!!」
と真っ青になって、慌てて騒いでいるWくん。
それに対して
「はぁ〜⁉︎
折角作ってきたのに、忘れたの、アンタ!!」
と怒ってるYちゃん。

「今回は仕方ないね。
来年、大切に使わせてもらうね。」
と先生方に慰められていた。

でもYちゃんの怒りはおさまらなかったようだ。
結局、お髭はつけずに劇に臨んだ。

そんな光景ばかりが思い出されて、肝心の劇が〜…⁇
私は何の役だったのか?
それとも出ていなかったのか?
思い出せずにいます。

終業式の午後がクリスマス会となり、会で使った赤い蝋燭と、お母さん方が丹精込めて焼いてくださった美味しいクッキーをもらって、お父さんやお母さんと帰る。
この時にはもう、辺りは真っ暗。
外の風が頬に当たって寒い!!

一番最初に通っていた小学校の文化祭の夜を思い出す。

翌日から冬休みに入り、たくさんの宿題が待っている。

星の輝く夜の学校。
お父さんやお母さんと一緒に門を出る生徒達を、マリアさまはいつもの穏やかなお顔で見守っている。

また新学期にね。

マリアさま。
わたしはマリアさまみたいに優しい人になれますか?

…続く……⭐️


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