18.2回目のクリスマス会

 心の拠り所である教会に、私は頻繁に通っていた。
大好きなシスターをいつも探して、彼女を見つけると、ずっとくっついて回った。
…彼女は、そんな私のことを、どう思っていたのだろう…

教会へ行かない平日の日は、渋い色のロザリオを、いつも勉強机の見えるところに置き、夜寝る前には必ず神さまにお祈りをして寝ていた。

明日も楽しいことがありますように。

 日曜学校に通うようになって2回目の冬、そして2回目のクリスマス会。
劇の練習が始まる。

私は何と!
1人の少年の寝ている枕元に舞い降りる3人の天使のうちの1人に抜擢された。
とても嬉しかった。
1人で喋るセリフもちゃんとある。

その “1人の少年” というのが、同じ小学校、同じ学年の男の子。
彼が寝ている時に3人の天使が舞い降りる。
実際は3人で、寝ている彼の枕元にそぉ〜と近づく。

私は彼の頭をまぁるく撫でながらセリフを
「よく眠ってるわ」
「いい子ね」…とかなんとか言う。
私は寝ている彼の頭を撫でる…のだが…
どうしてもお互い笑ってしまう。

演技の指導をしてくれてるお兄さんは、
「実際に触らなくてもいいよ。本番の時だけで。」
と、笑って話す。

毎週の練習が楽しかった。
数行の長めのセリフも、頑張って覚えた。

しかし、3人の天使のうち、1人の子が何かの都合で劇に出られないことになった。
誰か1人増やすことなく、天使は2人でやることになった。

劇の発表も、あと数日後に迫ったある日…

その日は仙台から叔母が泊まりに来ていた。
母は10人兄弟の3番目、次女。
仙台の叔母は下から3番目の妹。

この日は朝からとても冷える日で、叔母と2人で話をしながら…
2人でこたつに入ったまま、うたた寝してしまった。

目が覚めた時、妙に体が熱くてだるい。
普段から
「こたつで寝てはいけません」
と言われていたので、具合が悪いなんて絶対に言えない。
また母に叱られそうで、元気なふりをしていた。

それはなぜか…

私は、小さな時からよく熱を出す子どもだった。
熱を出すと母は、
「また熱出したの⁇」
と急に起こり出す。
だから、具合が悪くても言えない。
怒られるより我慢してる方がずっと楽だった。

叔母が私を見て
「具合悪いの?
顔が赤いわよ。
熱でもあるんじゃないの?」

大丈夫!!熱なんてないよ

母は
「こたつで寝ちゃいけないって言ってるでしょ!?
ほら、みなさい!!
こたつで寝たら具合悪くなるんだから!!」

叔母がそれを聞いて
「ごめんね。
私が寝ちゃったらね。」
と、かばってくれた。

熱を測ると、38℃後半の熱。
でも母は、声を荒げることもなく普通だった。
それは、叔母がいたからだと思った。
叔母に感謝!!

まだお昼間だったので、すぐかかりつけの内科に連れて行かれた。
診断は水ぼうそう。

私はクリスマス会も劇も、出られなくなった。
劇だけでちゃダメかと、母に聞いた。
ダメだってわかってるけど…

母が教会の人に電話をして、クリスマス会には出られなくなったことを伝えていた。
電話の向こうで驚いているその声が、少し漏れて聞こえてきた。

天使が1人になっちゃう。
ごめんなさい。ごめんなさい。

みんなの困った顔が浮かんできて涙が出た。

実は…
私はこの年の夏に、アパート住む若いご夫婦の赤ちゃんが水ぼうそうになったと聞いて、毎日抱っこしに行っていた。
夏休みの間に罹ってしまえば、学校を休まずに済むと思ったから、うつるように毎日抱っこさせてもらってた。
赤ちゃんもママも、大迷惑。

でも、うつらなかった。

あの時うつってたらなぁ…
みんなに迷惑かけちゃったな。
私ってなんてお馬鹿さんなのだろう…

…というか、今考えれば、赤ちゃんを抱きに行くという、この行動の方がおバカと思えてくるけれど、当時の私はそれなりに真剣だった。

その後、暫くして、
「日曜学校は辞めるからね。」
と母に言われた。

「そろそろ、まさえちゃんも洗礼を…」
と、母は言われたらしい。
実は、私も日曜学校で言われていた。

でも、母はきっとそんなこと反対するに決まっている。

案の定…
母は
「洗礼なんてだめよ。
教会はもう辞めるからね。」

再び神父様の家に行き、母は辞めることを告げた。
「これから受験勉強で忙しくなるので、辞めさせます。」

あんなに不思議チックでサンタクロースみたいなキラキラした神父さまの家が、今日は明るさがなく、何となく暗い。
神父さまのロッキングチェアが、寂しそうに揺れているように見えた。

…続く……✝️


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