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「平櫛田中回顧談」本間正義 小平市平櫛田中彫刻美術館編

美術評論家本間正義が生前の平櫛田中から聞き取った内容を文章にし、小平市平櫛田中彫刻美術館の藤井明氏が編集された本です。
先日、新潟市美術館で購入いたしました。

平櫛田中の口調そのままに、当時の情景が詳細に、生々しく語られていて素晴らしい資料です。
彼の頑固で面倒な性格を、自身でも自覚していたあたりが面白い!

彼の抜群な記憶力で多くの名前が出てくるのですが、それがいちいち良い話。
東京美術学校改革で高村光太郎を推薦するも、三顧の礼を尽くしても断られた話は、以前から興味を持っていたエピソードでもあり興味深い。
ただ、その改革で朝倉文夫や西望が追い出された理由までは語られていませんでしたが。(そこが最も知りたい)

加納鉄哉が若かりし平櫛田中の観音像を70円で買い、それが林忠正のカタログに古物として載っていた話。
美術学校で教えている石井鶴三にたいして、彼を神様扱いしている助教授笹村草家人に困った話。(やっぱりそういう人なのね)
米原雲海、山崎朝雲との関係等々。
昭和天皇が「鏡獅子」の話でお笑いになったというエピソードも良かった。

それとその「鏡獅子」の制作で、途中で興味が薄れ、のびのびとなって20年と自身で語られているところが生々しくて良い。
そういうものですよね。あまり神格化しちゃ駄目ですよね。

彼が量産販売目的で制作したであろう芭蕉像や気楽坊なんかも、他の作品と同等に語っている事に平櫛田中の仕事に対する真摯な姿勢をみます。
あの作品は誰それにいくらで売れただのが臆面なく語られているところに、高村光雲から連なる所謂彫刻師としての平櫛田中の姿が見えてきます。
そんな平櫛田中によって生まれたからこそ、彼の作品は面白い。
それをこの本で確認できたことが一番の収穫でした。

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