時をかけるランナー①不思議な出会い
健太は目を覚ますと、朝の光が窓から差し込んでいた。時計を見ると、いつものランニングの時間だ。大学の講義が始まるまでにはまだ余裕がある。彼はいつものようにランニングウェアに着替え、家を出た。
川沿いのコースは、健太のお気に入りのランニングルートだった。川のせせらぎを聞きながら走ると、心が落ち着き、次第にペースが整っていく。ある日、彼は川沿いの道端で何かが光っているのを見つけた。足を止めて近づいてみると、それは古びたランニングシューズだった。
「誰かの忘れ物かな…」
健太は周囲を見回したが、持ち主らしき人影はなかった。シューズは、見るからに年季が入っており、少しだけ磨けばまた使えそうな状態だった。彼は興味を引かれて手に取り、持ち帰ることにした。
翌朝、健太はそのシューズを履いてみた。最初は少し窮屈に感じたが、走り始めると次第に足に馴染んできた。しばらく走っていると、突然目の前の景色が揺らぎ、周囲が淡い光に包まれた。
「えっ、なんだこれ…?」
健太は目を見開いたまま、変わっていく風景を見つめていた。気がつくと、彼は見慣れない町の中に立っていた。建物や道の様子がどこか古めかしく、スマートフォンを取り出しても圏外になっていた。
「ここはどこだ…?」
健太は戸惑いながら周囲を見回し、何とかしてこの状況を理解しようと努めた。周りの人々は、彼の存在に気づく様子もなく、ただ日常の生活を送っているようだった。
「もしかして…これがタイムスリップってやつか?」
信じられない状況に、健太は少しずつ興奮を覚え始めた。彼は過去の世界に迷い込んだことを自覚し、この機会をどう活かすべきか考え始めた。