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タイにおける最低賃金の引き上げなど、昨今の主要な法改正

<最低賃金の改定>
タイでは、約2年半ぶりに最低賃金が引き上げられます。2022年10月1日より施行され、今回は平均 5.02% の引き上げとなります。コロナ禍において最低賃金は据え置かれていましたが、今年に入ってからの急激な物価高騰に対応するため、経済界からの反対意見もありましたが、タイ政府は引き上げを決めました。なお、新しい最低賃金は県によって異なり、県ごとの最低賃金は、労働省ウェブサイト(www.mol.go.th)で確認できます。
 
<中小企業との取引における与信期間ガイドライン改正>
タイ貿易競争委員会は、大規模購入者が中小企業に対して不当な与信条件を設定することを禁止するガイドラインを改正しました。中小企業に対して正当な理由なく与信期間内の支払遅延や契約条件の変更など、不公正な強制力を行使することを禁止するものです。新ガイドラインは、2022年9月16日から施行され、中小企業の定義が次のように変更され、義務が明確化されています。
1.従業員数200人以下で年間売上高5億バーツ
 (約19億4,000万円)以下の製造業
2.従業員数100人以下で年間売上高3億バーツ
 (約11億6,400万円)以下のサービス業または貿易業 
中小企業は、ガイドラインのもとで保護を受けると共に、中小企業のステータスを取引先に確認するために、従業員数と年間売上高の証拠を提供する必要があります。また、本ガイドラインが有効になる前にタイ貿易競争委員会に提出された苦情等は、2021年5月 24日に発行されたガイドラインに基づいて判断・検討される形となります。  
 
<BOI認可企業の土地所有権特典の復活>
タイ土地法では外資49%以上の企業は土地の所有が禁止されていますが、2022年8月8日、BOI は、BOI認可の外国法人が事務所および居住用の土地を所有することを認める告示No. 6/2565を発行し、2022年6月13日から施行されました。以前、この恩典はありましたが、外国からの投資をさらに促進するために復活させました。基準は、以下の通りです。
•払込登録資本金が5,000万バーツ(約1億9,400万円)以上
•事務所用の土地は5ライを超えてはならない(1ライ:1,600㎡)
•取締役または専門家の居住用の土地は10ライを超えてはならない
•従業員の居住用の土地は20ライを超えてはならない
•事務所および居住用の土地は、BOI認可の外国法人が所在する土地の領域内または領域外とする(以前は領域内のみ)    
•土地はBOI認可の外国法人の資格が失効または撤回されてから1年以内に売却または譲渡されなければならない
BOI は、本告示に基づいて、対象となる事業の種類、所有する事務所と土地が同じ場所にない場合の距離など、BOI が適切と考える追加の条件が設定される場合があります。
 
<清算人の権限・義務>
コロナ禍において、タイ当地でも多くの企業が会社を清算しました。会社清算の場合、まず商務省に解散登記を行い、その際、清算人を登録します。清算人の権限・義務としては、清算を終了させるために必要な手続きを進め清算を完了させることです。清算結了登記が完了した時点で清算人は消滅し、法人格も消滅します。清算結了登記完了後に予期しない事象が起きた場合、清算人は既に消滅しているので、債権者等の原告は裁判所へ訴訟提起し、それが受付けられると、裁判所から商務省へ当該会社の清算結了の取消が命令され、当該会社は清算手続中のステータスへ戻り清算人も復活します。なお、清算結了登記が完了して2年が経過すると、会社・株主・清算人を債務者とする弁済請求訴訟を起こすことはできないとされています(民商法典第1272条)。一方で、国の租税請求権は10年の時効となっています(民商法典第193/31条)。

(タイ/バンコク ビジネスサポーター 辻本 浩一郎)

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