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【IR分析 #79】 日清食品ホールディングス(2897)のIR情報から、「買うならどのくらい?」を考えてみた

「いい銘柄を、安いときに買う」ために、増益傾向など、興味を持つに値する企業をピックアップし、「どんな会社で何がいいのか」と、「買うならどのくらいか」を考えます。

これらは企業が開示するIR情報(※)から読み取れますが、専門的で量も多いので要点だけまとめました。多くの銘柄を時短で知り、ピンとくる銘柄を見つけて、安い時があれば検討することが目的です。

私自身が初期的な分析に使う手法を整理したものですが、効率的に投資候補を見つける一助になれば幸いです。

(※)有価証券報告書 決算短信 決算説明資料
2024.3期 (2023/4/1~2024/3/31)


Q1 どんな会社?

即席麺の開発・販売を中心に、幅広い食品事業を展開するグローバル企業。「カップヌードル」「チキンラーメン」など世界的ブランドを有し、即席麺事業が売上の約80%を占める。国内市場でのトップシェアに加え、米州、中国、アジアなどでも積極的に展開し、前期の米州地域売上は1,603億円で14.5%増加。

Q2 どんな状況?

少子高齢化による国内市場の縮小や人材不足、原材料高騰、為替変動といった課題に直面。一方で、健康志向の高まりに対応し、高付加価値商品の開発を強化。中期計画では既存事業強化、新規事業推進、環境負荷低減を柱に、DXや完全栄養食開発を進め、2030年までに売上収益1兆円を目標に掲げ、グローバル展開を加速。

【図表1】※は作成時点、その他は期末現在。
有価証券報告書等から作成


Q3 業績は?

2024年3月期実績:増収増益
米州地域や中国地域での売上が好調。材料価格の上昇などのコスト増加を増収効果でカバーしている。セグメント別では、日清食品の国内販売が引き続き堅調、米州地域では新規高付加価値商品の投入が寄与。中国地域では「合味道」の販売が好調、ベトナムの事業拡大も進んでいる。

2025年3月期予想:増収増益
国内外での即席麺需要の堅調な推移が見込まれるほか、新商品の投入や価格改定効果が売上拡大を支える要因となる。特に、米州地域での新商品展開とアジア地域でのプレミアム商品の販売拡大が成長のカギとなる。

【図表3】決算短信等から作成 (単位:億円)


Q4 予想の信ぴょう性は?

売上予想の前年実績比+7%は、過去5期の予想範囲(+3%~+16%)内にあり、平均達成度は102.8%と予想と実績がほぼ一致している。このため、売上予想は信ぴょう性が高いと評価できる。

一方、純利益予想の+3%は、過去の変動範囲(-22%~+34%)と比較して保守的な水準で、平均達成度は115%と、実績が予想を上回る上振れ傾向が見られる。これを踏まえると、会社の利益予想は控えめに設定される傾向があり、想定以上の利益成長が期待できる余地があると考えられる。

【図表4】予想は期初予想の前年実績比。
達成度は期初予想の達成率。決算短信等から作成


Q5 市場の評価は?

EPSが上昇するとPERが低下する逆相関が見られ、市場は利益成長を慎重に評価していることが分かる。5期前のEPSは93.8円、PERは32.0倍だったが、直近期はEPSが178.2円に増加し、PERは23.6倍に低下。この動きから、利益成長が十分に織り込まれておらず、過小評価の可能性があると考えられる。

直近期末のPERは23.6倍で、過去5期の高値PER(29.2倍)と安値PER(21.0倍)の範囲内にある。市場の成長期待は大きな変化はないが、評価見直しの余地は残されている。

【図表5】高安値PERは各期の高安値÷各期EPS。
平均は異例値を除く。有価証券報告書等から作成。


Q6 リスクをどう見る?

これまでの分析を整理すると、同社は控えめな利益予想を出す傾向があり、実績が予想を上回る可能性は考えられる。また、PERを見ると、現時点で明確な割安感はないが、利益成長が十分に評価されていないため、市場評価の見直し余地があると考えられる。

一方、EPSが増加してもPERが低下する傾向が続いている点から、市場は成長期待を抑制している。このため、短期的には過小評価による株価停滞のリスクがあるが、長期的には市場の期待が高まる可能性も考えられる。


最後に「買うならどのくらい?」を以下の観点から検討します。

過去の市場評価から、相対的に低い水準を「概ね安い水準」として算出し、さらに水準を絞るために、リスク許容度に応じた3つのシナリオを提示します。これにより現在の株価位置を把握し、安いと考える水準に達した際に投資を検討する準備ができます。

この先は有料ですが、全銘柄が読み放題のメンバーシップは初月無料ですので、ぜひご覧ください。

本記事は開示情報等を基にした客観的な分析を提供するもので特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また期中の業績修正等は反映しておらずリアルタイムの情報ではありません。記載の数値や分析結果は参考情報であり将来の価格や投資成果を保証するものではありません。内容には十分注意を払っていますが誤りが含まれる可能性があります。また情報は予告なく変更・修正される場合があります。有料部分の「買うならどのくらい?」は、過去の業績データや市場評価の傾向を基に理論株価や目安を提示したもので、これらは一般的な投資手法に基づく参考値であり特定の価格や投資行動を推奨するものではありません。また市場環境や業績修正のなどの影響により変動する可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任で慎重に行ってください。投資はリスクを伴いますのでこれらをご理解の上でご利用ください。


Q7 買うならどのくらい?

過去の市場評価の範囲から、相対的に低い水準を特定すると、投資を検討する際の目安として有効と考えられる。同社の場合、直近5期の安値PERの平均(21.0倍)から高値PERの平均(29.2倍)を概ねの評価レンジとすると、

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