富士山の周りはだいぶ回った。山梨の北口本宮浅間神社は40回以上行っている。だから今年の初めに身延山久遠寺に行って初日の出を見て「リング」か完成すると、姫神様たちが言う。
「でも河口湖の不二阿祖山大神宮に行ってませんが」
と言うと、
「行かなくていい」
と言われてしまう。有名な三本鳥居もあるし、行きましょうか?とお伺いを立てるのだが、行かなくていいそうだ。
 では、ということで、寒い中、初日の出を見に行くことにした。

 私は車が運転出来ないので、ツアーに乗って行く。元旦0時15分に東京駅に集合して連れていってもらう。幸い渋滞もなく、4時前に着いたので、添乗員さんがケーブルカーのチケットを買いに行っている間に、本堂の新年のご祈祷を見に行く。交通規制がされているので、近くの宿坊に泊まっていた人か、我々のようなバスツアー組か、前日から駐車して車中泊の人しか入れないのだが、いっぱい居た。日蓮宗の総本山なので、太鼓をガンガンに叩きながら祈祷する。明るい。何千人も入れる広い本堂に夜明け前の凛とした雰囲気の中、厳かなお経が心地よい。
 添乗員さんからケーブルカーのチケットを受け取って5時から開始するケーブルカー乗車の列に並ぶ。軽装のおじさんが
「俺は近くの宿坊に泊まってきたんだ。去年は七面山からご来光を見たので、今年は久遠寺だと思って来たんだ。例年なら下から登山道を3時間くらいかけて登るけど、今年は楽してケーブルカーで行くんだ」
と話していた。1番目に乗れたので、頂上でも一番前に陣取って7時のご来光まで2時間待った。いろいろ温かくする工夫して行ったつもりだったが、足先からしんしんと冷えてくる。ツアーで一緒だった不思議な感じの女性3人組に話かけられる。
「あなた、なんかお役目してるでしょう?」
と聞かれたので、
「はい、開けるをやっています」
と答えると
「今年はここよね」
というので
「そうなんですか?」
とびっくりして答えると
「私は普段はイギリスの学校にいて、そういう能力を磨いているの」
と当たり前のことのように言いだしたのでびっくりしていると
「あら?知らなかった?」
というので
「ハリーポッターみたいなもんですかね?」
と聞くと大笑いされて
「もっと明るいわよ。しかも子供が勉強にくるところじゃないの。大人が磨き続けるところなのよ」
というので、
「どんな魔法使えるんですか?」
と聞いたら
「まあ、動物系って感じかな」
というので
「神社の眷属みたいなものですか?」
と聞くと全然違うそうだ。世の中にはまだまだ知らないことがある。
 ご来光までの2時間は寒いし辛いので、口が凍りそうになりながら、話は盛り上がる。
 私のことも、これまでの経緯を、かいつまんで話すと、それまで黙って聞いていた一番偉い感じのお姉さんが
「命令して来たり、罰を与えてきたりしたら、おかしいと思うわ。気を付けて魔にはいられないように精進なさってね」
と的確なコメントを下さった。

 雲一つない青い空が少しずつ明けていき、富士山のシルエットが浮かび上がり、だいぶ右側からキラキラと輝いて朝日が顔を出して来た。一瞬、身体が上空に浮き
 富士山の上から全体像が見えた。富士山の周りをぐるっとリングが出来上がっていた。キラキラと金色に輝いて本当に綺麗だった。

 頂上からの帰りのケーブルカーも争奪戦なので、すぐに駅に戻り、一番初めに本殿に戻れた。近くの宿坊で朝食を食べた。簡単なおせちと、お雑煮を頂いた。寺のビールと書いて「じびーる」と読むというのを飲んで、冷え切った身体を温めた。