最近はミステリーツアーというのが大人気だそうだ。どこに連れて行ってもらうか分からないツアーで、お得感のある値段設定らしい。しかし実際に添乗員さんが案内すると、お客さんは行き先を知っているんだそうだ。なぜならパンフレットに掲載した写真を「グーグルレンズ」で検索しているかららしい。ミステリーツアーじゃないじゃんと思うけど、どのくらい得なのか、しっかり調べてくるらしい。
 私は、いつもミステリーツアーみたいなもんで、何をしに行ってるのか謎だらけなので、これはこれで楽しい旅なのかもしれない。
 今度は、伊勢湾の周りをぐるっと反時計回りに廻って「開けて」ということだったので、いろいろ探したら、東海地方の一之宮巡りがあったので申し込んだ。愛知からはじまり、岐阜、三重と一之宮と言われる神社を回るツアーだ。神社を回る人は御朱印を集める人が多いのだが、特に一之宮の御朱印だけを集めて回る人達もいる。結構、廻るのが難しい神社もあるので、こういう形でツアーが企画されて人が集まる。辺鄙なところにある神社は宮司さんが常駐していないことが多く、御朱印ももらうためには事前に交渉しておかないといけない。バスも一日に3便くらいしかないところとかもあるので、効率よく回るのは至難の業だ。ツアーで人数がいれば添乗員さんが事前に宮司さんと交渉して御朱印が手に入るようにしてくれる。御朱印なしで帰るわけにはいかないようだ。全国の一之宮を一度回れば良いような気がするけど、2周目、3周目もざらにいる。今回のツアーの一番のつわものは6周廻って7周目ということだった。皆、神をみるような目で彼をみて、あれこれ質問していた。結構、和気あいあいとしていて過ごしやすかった。

 予習しようと思って地図を見ると、伊勢湾に沿ってぐるっと廻るように大きな都市が並び、太平洋への出口が鳥羽と伊良湖のフェリーの道で塞がれている感じだ。昔、ここに大きな国があり、その遺跡が伊勢湾に沈んでいるとのこと。あっても不思議ではない。今回のツアーでは行かないが、そのうち、鳥羽からフェリーにのって神島に行って欲しいということだった。三島由紀夫の「潮騒」で有名になった島だ。そこがベンチマークになるらしい。

 また、日本は世界の雛形という考え方があるらしい。日本が世界の形の相似形だという考え方だ。例えば四国はオーストラリアに形が似ているということだ。その理論でいくと、伊勢湾はペルシャ湾に相似しているそうだ。そういうことも念頭に入れて、そのあたりの地図も思い浮かべながら廻って欲しいということだった。

 久しぶりに新幹線の各駅停車こだまに乗る。冬の晴れ渡った青い空。雲一つなく富士山が綺麗に見える。今回は、そんなに重いミッションではないんだなと気が楽になる。駅に停まるたびに他の新幹線に抜かされるので、停車時間が長い。新富士駅では乗客が次々にホームに降りて富士山の写真を撮っている。わざわざ逆のホームに行って、遮るものがない状態で富士山の写真を撮っている人もいる。
「富士山大人気ですね」
というとコノハナサクヤヒメ様がどや顔した。

 最初の停車駅は豊橋。バスにピックアップしてもらい砥鹿神社へ。三河の国一之宮だ。本宮山をご神体にしている里宮に参拝する。手水舎で手を洗うと、日本一のさざれ石が目に入る。本殿で参拝して、左手に元宮の遥拝所がある。ちゃんと元宮と繋がっているなと感じられる。紐で繋がっているのではというくらい強い繋がりを感じる。その左に普通なら神馬があるところに神鹿の家族の像が飾ってある。めちゃめちゃ可愛い。特に子供の鹿が可愛い。
    次に大神神社に行く。尾張の国の一之宮だそうだ。丁度、お祭りをやっているという情報があったので、ちょっとテンションが上がる。実際に行ってみると誰も居ない。近くでお祭りがあって宮司さんが居ないかもという情報だったようだ。変わった造りの本殿で手を合わせ、本来、参拝して欲しいところはどこか探す。社務所の近くに小さい祠があり、ここだなと分かったので静かに手を合わせる。
    昼時になったのできしめん屋に行く。早めに食べ終えて店の隣の神社に行ってみる。富士浅間神社という所だった。名古屋の街の中心。結構立派なお社。コノハナサクヤヒメ様がどや顔している。可愛い桜守りを買う。本当はもっとお城の近くに祀られていたのだが、工事のために仮のお社をここに建てた。ところが工事が終わっても戻らず、ここで大事にお祀りされて現在に至るそうだ。戻ってもらえなかったところには富士神社というのを建てて納得してもらったそうだ。地元の人の信仰が無く荒れ果てたお社もたくさん見ているので、こうやって大事にしてもらえるのは良いですね、と言うと、コノハナサクヤヒメ様が改めてどや顔をした。