地表に住む私たちにも色んな種類の人間がいるように、地底人にも色んな種類の人が居るそうだ。色んな食の好みがあるように地表の人間を喰う地底人もいる。しかし、普通に襲って食べたら、それはルール違反になる。そのルールの隙を突く為に、いろんな工夫をしているらしい。キーポイントは「虐殺された家畜の肉」を食べているかどうかということだ。成仏してない霊を「虐殺された家畜の肉」を食べている人に憑依させる。そして、その憑依された人に、「虐殺された家畜の肉」を食べている別の人を殺させて、生贄に差し出させる。物凄くざっくり言うとそういう仕組みだ。それだとルール違反にならない。肉を食べてたら、すぐ生贄に出来るということではなく、「場」も大事だったりするのだが、「虐殺」された肉を食べると、その人も生贄の提供を受けたことになり、自分が生贄になっても文句言えないということらしい。
 ということで、私の安全のためにも、暫くは肉食は止めなさいというアドバイスを、布引観音からついてきてくれた地底人は教えてくれた。

 また同時にお願いもされた。年内で遺骨の収集を終了にする場所が沢山ある。特に戦争などで亡くなられた方々の遺骨すら祀って差し上げられないのは、とても心苦しい。だから地底人曰く、今年のうちに出来ることは出来るだけして欲しいというお願いだった。来年になると、「お骨」と「魂」の距離が急に遠くなるということらしい。今までは、「お骨」を丁寧に祀ることで、「魂」も祀ることが出来た。しかし、今後は、その結びつきが減るということだ。逆を言えば、今後は「お骨」を集めきらなくても、心を込めて祀ることで成仏して頂けるということだ。今年は、その過渡期なので、殊更、丁寧に祀って欲しいということらしい。
 丁度、タイミング良く、友人が上京してきてくれた。私の行きたい所にどこでも付き添ってくれるというので、私が一人で行こうとすると具合が悪くなって行かれない千鳥ヶ淵戦没者墓苑に付き添って欲しいとお願いした。
 地底人からは、特に硫黄島に思いを馳せて欲しいとお願いされていたので、いろいろ調べてみた。まだ1万体以上もお骨を拾えてない方がいるそうだ。硫黄島は住民が居ないので、軍事訓練に適していて、基本的に遺骨収集のための遺族の上陸が許可されない。たまに単発での上陸しか認められないので、お骨の収集は先が見えない。集めて差し上げられる可能性はほぼ無い。お骨に対して思い入れのある遺族も高齢になり、今後はお骨の収集が進む見込みも薄い。知れば知るほど、胸が苦しくなる。そういう話を上京してきてくれる友人にしたら、友人の親族が以前、硫黄島に遺骨収集に行ったことがあるとのこと。そういうご縁だったのかと納得した。
 二人で千鳥ヶ淵戦没者墓苑に向かったら、嘘みたいに簡単に辿り着くことが出来た。そこには明らかに硫黄島の戦死者たちが整列して待っていた。大勢いた。最前列に居た3人にそれぞれ菊の花を手向けた。友人に慰霊のお経をあげてもらいながら、戦没者に地底人から聞いた話をお伝えした。今後は遺骨の収集も進まないことを、まずは伝えた。千鳥ヶ淵戦没者墓苑にいらっしゃる戦没者は収集してもらったお骨があるので、そこに居るのだが、一緒に戦った仲間のお骨が来るまでは成仏しないと決めて待っているけど、待っても来ないということを伝えた。また、今後は、お骨が無くても子孫が祈ることで成仏していくことが出来るようになるので心配いらない、ということも、心を込めて伝えた。戦没者の方は私が伝えなくても、それは分かっていたのだろう。友人のあげてくれるお経に清められながら、白く細い打ち上げ花火のようになって、次々と成仏なさっていった。そのうちの何人かは私の身体を通って、成仏していった。10代、20代の若い人が多かったはずだが、物凄く、おじさんの雰囲気で、土臭くて、エネルギーも強かった。皆、男泣きに泣いて逝ったので、私も涙が止まらなかった。通過された私は、ぐったり疲れてしまった。そのあと、友人に靖国神社と筑土神社を一緒にお参りしてもらい、しっかり、慰霊の祈りを届けることが出来た。お骨と魂の距離が開き始める秋分の日の前に行くことが出来て本当に良かった。


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