随筆 味噌汁は好きですか?
1. 朝食でみそ汁を飲んでいますか?
朝食の時、どのくらいの人がみそ汁を「美味しい」と味わっているだろうか?
年配の人にとっては、それは「コメは美味しい」と感じながら食べているか?
これと同じような質問かも知れない。
若い人の中には、毎朝出かけるぎりぎりまで寝ていて、
朝食の時間なんてとても取れなくて、
朝食を抜いている人もかなりいるだろう。
働き盛りの中年の人は、夜遅くまで仕事をして、
寝る前に夕食をたっぷりと食べている人もいるだろう。
だから朝起きても、空腹を感じないために、
朝食なんて食べる気がしない人もいるだろう。
そうすると、朝食を食べている人で、
味噌汁付きの和食を食べている人は、
ごく少数者になるのだろうか?
そうは言っても、若い人でも
「生まれてからこのかた、みそ汁を一度も飲んだことがない」
という人も少数派だろう。
2 味噌汁は好きですか?
本題に入り、「みそ汁は好きですか?美味しいと思いますか?」
と皆さんに問いたい。
田舎の小さな町で、生まれ育った私は、
毎日朝味噌汁を飲んだ。いや飲まされた。
結構、具が沢山入った味噌汁であった。
高校生になった頃だった。
「もう、しょっぱい味のみそ汁は飲みたくない」とある日思った。
それ以来、長い間みそ汁はほとんど飲まなくなった。
3 ある日、味噌汁が懐かしく美味しいと思った
20年近く経ったころだった。
私はイギリスでの英語研修のため、1ケ月近く日本を離れた。
日本に帰った次の日、ホテルで朝食をとった。
和食を選ぶと、味噌汁が付いていた。
蓋を取り、においを嗅いだ。
「懐かしいなあこの味!日本の味だ」と思い、一気に飲んだ。
そして感動のあまり、涙が出そうになった。
それ以来、また私は味噌汁を飲むようになった。
あの時の感動は今は無いものの、
朝コメを食べる時は、味噌汁が無いと少し物足りないようになった。
4 味という呪縛
郷愁を誘う食べ物として、すき焼き、おでん、寿司などいろいろある。
しかし、子どもの頃、味噌汁のように毎朝決まって食卓に出てくる料理は、
味覚を通して頭脳の中にしっかりと刷り込まれた味の記憶として残る。
そして、年月を重ねても、ある日ふと何かの時に、
強烈な感情を伴い懐かしさと共に甦ってくる。
私たちはその味の呪縛から一生別れることができないのだろう。