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随筆  懐かしい海水浴

夏が来ると、子どもの頃の海水浴を思い出す。

山合の小さな町で私は生まれ育った。
当時、私が通う小学校にはプールが無かった。
夏休みになると、私は水泳パンツを身に着けると、
近所の子ども達と少し離れた大きな川で水遊びをした。
川は浅かったが、横になって首近くまで、水につかり、
足をばたばたとすると、少し泳いだ気分になった。

そんな子ども達にとっての楽しみは、年に1度の海水浴だった。
夏休みになると、町内の隣組で2、3台バスを貸し切り、
大人も子どもも、2時間くらいかけて海水浴に行った。

海が見えてくると、子ども達は「海だ、海だ」と大はしゃぎだった。
海水浴場に着くと、待ちきれない子ども達は、
いっせいに海に向かって走っていった。

昼食が終わると、砂浜に全員が集まりスイカ割りが行われた。
声援を受けて、大人たちは景品のスイカを得ようと必死だった。
それが終わると、子ども達はまた海に入って行った。

バスの中は行きも帰りも、子どもと大人両方の修学旅行のようだった。
子どもも大人も得意な歌を歌い、ちょっとした「のど自慢大会」が開かれた。
但し、遊び疲れた子ども達は、帰りバスの中では、すでにうとうとしていた。

夕食の後、風呂に入ると、一日かけて日焼けした腕や肩がピリピリと痛かった。
それでも、私は丸一日海水浴を楽しんだ満足感でいっぱいになり、
寝床につくと、夢の中にすぐに入った。

大人達の苦労をしらなかった私は、まるで映画「三丁目の夕日」の世界をそのまま生きていた。


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