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随筆 アサガオさん、ありがとう
1 夏の朝
毎年夏になると、朝起きるとすぐにアサガオを見に玄関前に出てしまう。
「今日はどんな色の花がいくつ咲いたかな?」
白、ピンク、水色、赤紫、どの色が咲いたか楽しみである。
※ 表紙の写真は大きめの鉢に育てたアサガオ
2 中学生の頃、課題と勘違い
中学校の1年生の時だった。「技術・家庭」という科目の授業があった。
教科書の中に、アサガオと菊の育て方が載っていた。
先生は「試しにアサガオを育ててみてください。花が咲いたら見せてください」と言った。
私はそれがまるで夏休みの課題のように聞こえた。
さっそくアサガオの種を買い、素焼き鉢の奥深く置いてみた。
種というものは土の深いところに置くものだと思っていたからである。
毎朝、今日は芽がでたかとチェックした。
しかし、いっこうに芽がでなかった。
夏休みが終わると、先生から「育てた朝顔を提出しなさい」と言われたらどうしようと心配だった。
幸いにも、私の勘違いであったようだ。
3.アサガオを育て始めた
しかし、アサガオの芽すら出なかったことが大変悔しかった。
次の年、アサガオを育て、是非とも花を咲かせようと思った。
今度は浅いところに種を置いて、毎日水を掛けることを忘れないようにした。
今度は芽がでて、しばらくすると毎日ぐいぐいとツルが伸びていった。
まだか、まだかと待っていたら、7月になった頃、水色と薄い赤色の花が咲いた。
始めて私が育てた植物の花であった。
それからは毎年アサガオを育てた。
残念なことに、高校を卒業して大学進学のため、自宅を離れると、
狭いアパート一室では育てる場所はなく、いつの間にかアサガオのことはすっかり忘れた。
4 再びアサガオを育てた
30台になり、結婚して子どもが生まれた。
子どもが小学生になると、夏休みの自由研究という課題があった。
子どもの自由研究のためにと、いくつか花の種をまき、その成長記録を手伝った。
これがきっかけになり、私は玄関前の鉢に再びアサガオを育て始めた。
5 職場の中庭で
自宅前の鉢のアサガオを育てるだけでは、物足りなくなった。
勤務していた学校の中庭にそっとプランターを置いて、アサガオなどを育て始めた。
だれからも、何も苦情を言われなかった。それどころか、花の好きな同僚が
話しかけてくるようになった。
そこでこれ幸いと少しづつ、プランターを増やしていった。
仕事上のことで困って悩んでいる時には、時間を見つけてはプランターの手入れをした。
すると、不思議なことに、まるで怪我の痛みがスーッと消えるように、いつも気持ちが落ち着いた。
人事異動で別の学校に替わっても、同じようなことをしては密かに園芸を楽しんだ。
6 思う存分、園芸を楽しんだ
なんと、幸運にも最後の勤務校では園芸部の担当になり、
学校の花壇に、アサガオなど自分の好きな花を、好きなだけ堂々と植えることができるようになった。
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この頃には園芸の本もいくつか買って、自分なりに花の育て方を勉強した。
放課後は、ほぼ毎日夢中になって花壇の手入れをした。
アサガオは暑い夏の日陰になるからなどと、理由をつけては、
校舎の2階近くまで、アサガオのツルを伸ばせては、花が咲くのを楽しんだ。
部員の生徒はあまり活動をしなかったが、私は全く気にならなかった。
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7 定年後
定年になった時、なんとかして園芸を続けようと思った。
妻は一人娘で、その時は妻の両親はすでに他界しており、家の庭が空き地のまま残されていた。
退職金で妻の実家を改築し、その家に住んで園芸を楽しむことにした。
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玄関前の大き目の駐車場には、大小数十の色んな花の鉢を置き、アサガオは直径40cmの大きな鉢で育てている。
細長い庭は家の裏側にあり、150cmぐらいのアーチ状の支柱を2本組み合わせ、
そこにも毎年アサガオを育てている。
長年、アサガオの花に心を癒され助けられた。アサガオは私にとって、掛け替えのない大切な存在になった。
アサガオさん、ありがとう。元気が続く限り、これからも育てます。
8 補足
夏も終わり、9月の下旬になると、今年もよく咲いてくれたアサガオも花が咲かなくなった。そこで9月の末、枯れ始めたアサガオを整理した。ところが白いアサガオはどうしたわけかまだ咲き続けた。一部は枯れ始めているが、最後の花が咲くまで整理しないことにした。
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