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「とりあえず生!」のノリで「とりあえずAED!」は、やめてください。
「とりあえず生(ビール)」ほど、日本人の団結力を試す言葉はありません。
居酒屋で乾杯するなら、まずは生ビールです。誰かが「とりあえず生」と言えば、全員が「それで!」と頷くことでしょう。この一言は、悩む時間を省き、場の空気を壊さないための便利な言葉です。
しかし、この「とりあえず」の精神がAEDにも適用されると、非常に危険です。
駅のホームで人が倒れたとき、「AEDを持ってきて!」と誰かが叫び、誰かが走ってAEDを取りに行く。これは素晴らしい行動です。
しかし、問題はその後の行動にあります。
「とりあえずAED!!」
そう言って、すぐにAEDをパッと開け、ペタッと貼るイメージないですか?
ちょっと待った!!
AEDは「とりあえず生」とは異なります。
生ビールなら誰が飲んでもたいてい美味しいですが、AEDは誰にでも貼っていいわけではありません。
AEDを使うのは「心停止している人」に限定されます。
心停止とは何か? 心臓の機能が止まってしまい、血液が全身に送られなくなった状態です。意識がなく、呼吸が止まっている場合、すぐに救命処置を行わなければ命にかかわります。
そのため、重要なのは「反応(意識)の確認・呼吸の確認」です。
絶対にセットで! AEDの前に反応(意識)と呼吸を確認してください!
声をかける:「大丈夫ですか!?」
肩を叩く・揺さぶる
息をしているか? 胸が上下しているか?
呼吸の確認は10秒以内で判断してください。
10秒近く観察し、状態が分からないときは「判断に迷う」として心肺蘇生を行います。
確認せずに「とりあえずAED」と貼ってしまうと、本当に必要かどうかを判断する時間が奪われてしまいます。
だから、「とりあえずAEDを!」と叫んだら、次に言うべきは以下の通りです。
「息をしているか確認して!」
「とりあえず生!」と頼んだ後に、メニューを見るように、「とりあえずAED!」と叫んだ後に、意識と呼吸を確認するようにお願いします。
この二段構えをセットで覚えてください。
ただし、本当に心停止なら、AEDは「とりあえず」どころではなく、最優先で使用すべきものです。
生ビールは急がなくても構いませんが、AEDは、1分遅れると助かる可能性が10%下がります。
したがって、「とりあえずAED!」と叫ぶのは正しい行動です。ただし「とりあえず貼る」のではなく、「とりあえず意識と呼吸を確認」もセットでお願いします。
AEDは急いで! それが命を救う鍵です。
そして、居酒屋では「とりあえず生!」の後に、ゆっくりつまみを選んでください。ビールは多少遅れても、命には関わらないのですから。