紙屋の仕事道具① スポイト
七十才くらいの和紙屋さんが、舌を少しだけ出して、ゆっくり、ちょん、と紙を舐めるのを見て、びっくりした記憶があります。
お客さんから預かった紙がどういう紙かわからなかったので、和紙屋さんに相談に行った時のことでした。
まだ、僕は紙屋さんになりたてだったので、「えー!なんで紙舐める?」とびっくりしました。
ゆっくり、ちょん、と上品な舐め方でした。和紙のことはなんでも知っているし、尊敬できる和紙屋さんでしたが、僕は正直「汚い」と思ってしまいました。
その和紙屋さんは亡くなってしまったので、なぜ紙を舐めていたのかはわかりませんが、たぶん紙を舐めることで、吸水性やサイズ(にじみ止め)の効き具合を見ていたんだと思います。
紙関係の仕事をしていると、にじみ具合や吸水性を確かめたいシーンが結構あります。
とくに、僕はコースターの紙を扱っているので、その機会は多いです。
ですが、紙は舐めたくありません。
だから、僕は、水を少し入れたスポイトを持つようにしています。
実際に一滴たらしてみるのが一番です。
写真は、僕が実際に持ち歩いているものです。
正確にいうと、スポイトではないかもしれませんが。
習字用のやつです。