人はどう成長するか。（よう実から）

ようこそ実力至上主義の教室を見た感想と考察。

このアニメ、漫画は結構思慮深く、実力と平等をテーマに語っているように思える。１話からこの世界は平等だろうか。そうあるべきだが、現実はそうではない。福澤諭吉も「天は人の上には人を造らず」との言葉を用い、学問をしたかどうかによって変わってくる。と述べている。しかし、この物語はどうやら学力だけではないということを教えたいようだ。
体力・学力という数値だけではなく、社会的地性、戦略立案・実行力のような一般的に数値にすることが難しいとされることの重要性を教えようとしているのではないか。

自分は、この物語をアニメで視聴しており、現実でこんなことはないだろうとツッコミつつも、どうしても先が気になる物語だ。
３期シーズンは2024年になってから放送されており、そろそろ終盤に差し掛かる。主人公の綾小路が所属するCクラスはいろいろなイベントに向かいながらも一人一人が変化し、クラス全体が変化していく。
個人的に印象的なことは、Aクラスの坂柳がBクラスの一ノ瀬の過去の万引きについて噂を吹聴している際に、綾小路の行動だ。一ノ瀬は豊かな家庭で育ったわけではないが、母と妹と楽しく過ごしており、妹が欲しがっていた飾りをどうしてもプレゼントしたくてバイトをしようとしたが中学生のため断られてしまう。そこで、万引きに出て一時的には妹を喜ばせることに成功するが、母が見抜き結果として万引きをしてしまったことになる。一ノ瀬はそのことで半年もの間外へ出ることができず、自分を責め続けた。殻に閉じこもり、外で出ることができないが、母の後押しもあり、高度育成学校へ進学することに決めていた。
その事情を知る綾小路は、一ノ瀬がその事実を誰にも告白できずにいたことを知り、一ノ瀬の部屋を訪ねる。繰り返し見舞いに行きつつ、一ノ瀬が尋ねると綾小路は「お前が事実を言うのを待っている」と述べ、過去の事実は変わらない。と言う。そこで、一ノ瀬の様子は変わり、過去の万引きのことを暴露し、泣き崩れる。
ここで、綾小路は一ノ瀬の心を叩き折った。と表現しており、一ノ瀬の心は強くなり、坂柳の追求にも屈しなかったといっている。

個人的にここから見えてきたことは、一度叩き折る。ということだ。
心の成長には挫折や絶望のようなある種の苦しさがある。それを経験させ、一度心の限界点まで追い詰め、それに対して向き合い、徹底的に戦い、挫折を味わうことで新たなる成長が見込めるということだろう。
筋肉でも、筋繊維を壊し、修復し、また壊し、また修復しどんどん成長していくように心もまたそのようなプロセスを踏んでいるのだろう。

その他のエピソードでも、平田洋介についても鋭い言葉を投げかけたり、顔の出来事から平田の点について指摘することで平田の心を一度壊し、徹底的に追い込むことで向き合わせ、さらに心を強くさせたのだろうと思う。
個人的には、平田がなぜDクラスにいるのかわからなかったが、その過去を知ると少し足りない点もあったのかと知った。
平田は、過去に友人がいたが、いじめにあい、助けることができなかった。そして、その友人の次にはまた別の人がいじめの対象となっていた。その悔しさから自分がトップに立ち、他の生徒に対して恐怖を通して問題行動をできないような状況を作った。こんなことができるのか？という疑問はあるが設定上仕方ない。
だが、Cクラスには、堀北や高円寺などのように平田が恐怖で脅そうとしても、それに屈しないような強いメンタルと身体能力を有する者がいる以上、恐怖で脅すという手段は使えない。
そこで、綾小路は、退学者が出たのは平田の責任だという。
Bクラスの一ノ瀬は退学者を回避することができたのだから本気で退学者を出さないようにするならそうクラスを導いて来れなかったことに責任があるという。それに加えて、薄っぺらくて無能な生徒という。厳しいなぁ。
しかし、本音で平田に対して、事実というか、厳しい言葉を伝えることで、平田は泣き崩れ心が一度完全に崩壊する。だが、先に見た一ノ瀬と同じで平田の心は一度折れたことでさらに強くなり、翌日からは心を改めクラスへ積極的に協力するようになる。

このように、一ノ瀬も平田も、あえて厳しい言葉を言うことで、その心をへし折り、一度折れた心が回復し、さらに強くなるという過程を経て、心が成長するのである。
この物語では他のドラマなどに比べて、個人の過去や出来事について丁寧に描写するというよりも、学園全体を描きつつ、クラス単位も描いているので、個人の過去について言及することは本当に中心人物の人たちくらいだ。一ノ瀬や平田はそうした人物ということだろう。
その人物との接し方から人の成長のプロセスが見えてきた。
心の成長という観点から分析してみて、改めて、学力や身体能力だけが全てではなく、それ以外の観点からも分析できるこの物語は非常に面白いと感じた。
設定も独特であるし、特別試験も現実の学校にはないような試験が多く、しかし、現実ではあり得ないSFの世界ではないことから割と親近感を持ちつつ、みていて楽しいと感じるのだろう。

ということで、心の成長という観点から分析してみましたが、ぜひ感想を教えてください。自分も心の成長をせねばっ。。